拝啓
炎暑の候皆々様には御変りなき由重用主事殿より御伺ひ致しました。
何より軍犬報國の為め邦家の為め御喜び申上げます。

降つて當班も七月初旬來、大行山脈地方山岳地帯大討伐戦に参加致し、六十年來の大雨期中にて見渡す限り泥濘の海にて浅き處で膝を没し、深き處で乳を没し、山を越え河(人馬をも押流す激流)を渡り、幾度か敵は胸を突く高山に依り返撃する中を月餘に渡り進撃せしも、人犬共も無事○○基地に帰還せるば、之れ皆一重に銃後皆々様の御後援の賜物と班員一同御禮申上げます。

今討伐中合同新聞社井上特派員が敵弾雨撮影せられたる写真数葉御寄贈したされし故、御送附致します。
當雨期中、一日二回位瀧の如き大豪雨來る。上ると百三四十度の炎暑ですが、軍犬も大分疲労せしも無事でした。
軍犬の重要なる事は益々です。一意訓練の程を感謝すると共に、宜しく御願ひ申上げます。
末筆乍ら皆々様軍犬の為め、又暑さの折柄、御自愛あつて御健康の程を御祈り申上げます。
敬具
八月十一日
柳川部隊軍犬班 寺坂四郎

大行山脈討伐中の〇〇部隊軍犬班
いずれも班長寺坂四郎氏より