殖産興業の一環として、明治時代に牧羊事業が導入されました。
それと共に牧羊犬も来日し、日本牧羊犬史も始まるのです。
羊毛を得るための大切な羊。しかしその飼育は、風土病や近親交配などの影響でナカナカ軌道に乗りませんでした。
追い打ちをかけたのが跳梁跋扈する野犬の群れです。羊の輸入に先立ち、下総の御料牧場では野犬の駆除もおこなわれました。北海道の牧場で、馬匹保護のためエゾオオカミが退治されたのと同じですね。
明治九年三月、横濱に於て英國産バークシヤイアー種牝牡九頭を購求し、大に蕃殖を謀りたるも、仝族交尾なるが故に自然骨格矮小に傾き、頗る卑陋の體格となり、十八年二月中英國種牝牡弐頭を購求して漸次良種を増殖せんとす。
創業以来明治九年に至り、諸般の事業既に緒に就きたるも、素より本場の如き四隣宏豁にして猛獣の棲息する地なく、他に恐るべき外患なしと雖も、近傍野犬の多き昔年、馬牧たりしとき馬の犬害に係る頗る多しと。
夫れ犬の羊に於ける之を敵視し、之を嗜食するは自然の性に出て、本年秋季綿羊輸着に先だち之が豫防の方策を設けざれば、到底牧羊の目的を達する能はざるを以て牧羊場を去る四里以内の町村に於て、野犬獲殺及び銃殺の規則を設け、又明治十年五月、場内に於て野犬の防害并耕地鳥類豫防の為め威銃を備へ、専ら駆除捕獲の方法を設けたり。
「下総御料牧場の沿革」より 明治30年
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下総牧場の野犬駆除 明治10年
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