生年月日 昭和5年頃
犬種 雑種
性別 不明
地域 高知縣
飼主 八重松氏
高知市中島町八重松氏方で五年間飼育して來たポチは雑種の小柄な犬であつたが、生來とても怜悧で八重松夫人竹榮さん(三二)が目に入れても痛くないほどの可愛いがりようで、ポチは竹榮さんによくなつき、すつかり言語を解するようになり外出のときなど「手袋を持つてお出で」「財布を」「襟巻を」と命ずると一々返事の言葉を出さぬだけですぐ二階に駈け上り探し求めて、口に銜へ梯子段を下りて來て渡す。
公設市場へ買物に行く時も、籠や風呂敷を銜へて御伴をし、帰りには犬の倍ほどの重い荷物でも喜んで口にし脇見せず、道草を食はず、自宅に運ぶ。
そして病身な竹榮さんを助けて一生懸命働くいぢらしさ、それが一朝かりそめの病でこのほどポツカリと死んだ。
愛犬新聞「ポチ公は死んだ 言葉を理解した犬」より 昭和10年
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ポチ公(お使い犬)
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