死亡したシェパードの血統書が廃棄されることなく他のシェパードにすり替えられる不正行為は、戦時を通して帝國軍用犬協會や日本シェパード犬協會の地方支部で問題化していました。多くは噂話だったのですが、実際に新聞沙汰となったのが戦前に発覚したKVの不正血統書疑惑。
昭和28年に日本シェパード犬登録協会の中島基熊氏が「シェパードの血統書にアンゴラウサギが載っていた事件」と書いてしまい、以降はアンゴラウサギ事件とも呼ばれています(実際はウサギなど関係ありません)。
この不祥事を機に内部告発者の伊藤藤一は自分が創設したKVを辞任。共に日本シェパード倶楽部から合流した幹部も主流から外れ、以降の数年間で帝國軍用犬協會は軍事色を強めていくこととなりました。
KV側は「ウチは悪くないよ。むしろ騙された被害者だ」という責任転嫁、JSV側は「復讐の時は来た!これを機にKVをボコボコにしてやれ!」という悪ノリの傾向が見られますので、この事件の資料は両者の仲介役だった犬の研究社・白木正光のものに求めました。
序論
十一月廿九日朝日、日々の両新聞を除く東京新聞の朝刊は、一斉に恰も帝國軍用犬協會の血統証明書
新聞記事の内容
そして記事は相當詳しく、殆んど新聞一段以上に亘つて書かれてゐるが、内容はどの新聞も大同小異で大體
我等の態度
それを何故犬界ニユースの報導を特色とする本誌が書かなかつたか、
近因遠因
今度の事件の近因は「人の噂」誌九月號にのつた、並木
伊藤氏假面を脱ぐ
談判決裂
永田氏の傍杖
取調べの内容
協會の動揺
協會の新陣容
我等の主張
犬界の大同團結
不祥事続きのKVが動揺する間隙をついて、日本シェパード犬研究會(NSK)は社團法人日本シェパード犬協會(JSV)へ発展解散。NSC強制合併時の禍根を残す両団体は、「犬界の大同団結」どころか日本シェパード界を二分する抗争を繰り広げてゆくのでした。