「余、此頃横濱の名射手川瀬君と犬の事を語りし時、君は曰く、昨年相州に遊猟の折、宿主何心なく銅器にて犬に食物を與ふるを見しかば、明朝は能く洗ふて更に食を盛り與ふべしと咄し置きたるを誤て洗もせずして前夜食せしまゝの銅器にて食せしめられしをば、犬は間もなく銅毒の爲めに死亡せり。誠に恐るべきは銅毒なりとは咄されたり。
尚余の聞く所に依れば、犬にハせうが、わさび、こせうは勿論、ねぎ、にんにく、等もあしゝと云へば、飼ふもの必ずべき事にこそ、此種の御氣附ある諸君ハ續々御投書ありて可ならん歟」
海山子誌『銅器にて犬に食物を與ふるの害』より
銅はともかく、明治時代の愛犬家がネギ科植物の中毒を知っていたことに驚かされます。こうやって危険が周知されていたにもかかわらず、大正~昭和に入ると情報も忘れ去られ、犬の飼糧リストにタマネギやニンニクが載せられるようになってしまいました。