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戦前の犬の相談係の本音トーク・その1 昭和12年

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ペット飼育に関する情報がネット上に蓄積されている現代。愛犬の健康管理や治療法についても容易に検索することができます。

ネットやテレビが無かった時代、愛犬家はどうやってその情報を入手していたのでしょうか?

もちろん、ペット黎明期の明治時代は猟犬の健康管理法をハンター同士が情報交換し合う程度。しかし大正時代になると犬の健康相談コーナーがペット雑誌に登場し、昭和になると全国紙にもペット飼育コーナーが載るなど、愛犬家の情報網は飛躍的に拡大していきました。

しかし相談に応じる側も全知全能ではありません。種々雑多な質問に答えねばならぬゆえ、それぞれ悩みを抱えていたのです。

今回から、犬の相談係たちの座談会をご紹介しましょう。当時の世相もうかがい知れて、ナカナカ貴重な記録です。

 

出席者

板垣四郎

遠藤智

久我優祐

佐治正次郎

水野五郎

白木正光

 

白木

最近雑誌や都下の大新聞にまで犬の問答欄が設けられ、愛犬の便宜を計つてゐますが、かうして犬に對する關心の高まつて行く事は、非常に結構なことだと存じますので、今夕は皆さんから質問の傾向やら、質問者に對する御希望やら、その他色々御感想もあらうと思ひますが、それ等の隔意なき御意見を伺ひたいのであります。佐治さん、新聞の讀者はどういふことを一番聞きたがつてゐますか。

佐治

質問の病名別を百分比で調べてみましたが、それによると、皮膚病が第一位で、次が寄生蟲。それからテンパー、蕃殖關係が同數と云つた數を示してをります。

次に表を示しますと

皮膚病 一四.〇〇%

寄生蟲 一三.〇〇

テンパー 一〇.二五

蕃殖 一〇.二五

胃腸病 七.七五

訓練 七.五〇

外科 六.五〇

フヰラリア 五.〇〇

眼科 四.二五

外寄生蟲(ダニ) 三.二五

佝僂病 〇.五〇

耳 〇.五〇

雑 一七.二五

で、外科から以下は目立つて減つてをります。

遠藤

私の方は大體専門的にといふので、分擔を定めてやりました。フヰラリアは板垣博士、外科は木島氏、私の所へは、皮膚病、テンパーの質問が來るのですが、皮膚病が大部分です。皮膚病は外部的に見て、一番愛犬家に判り易いからでせう。珍しいのは殆んどありません。

板垣

來た質問にはみな答へますか。

佐治

代表的なものを選み、且つ重複しない質問に答へるやうにしてゐます。

板垣

雲を掴む様な質問が來ますな。

遠藤

謎の様なのが來ます。

板垣

謎の様な質問には謎の様な答をするより仕方がない(笑聲)。耳が立たぬがどうしたらよいか、といふのが随分來ますね。

久我

多いです。日本犬、シエパード犬の質問に多い。

佐治

本の讀者から來る質問には、要領のいゝ、調べねばならぬやうなのが多いので、これは勉強になります。

板垣

犬の研究の質問にも、どうかと思ふのが來ますな(笑聲)。

白木

數來る中には色々ありますが、眞剣なのも多いです。

(長くなるので次回に続きます)

 

『愛犬家はどんな犬病に一番悩んでゐるか』より 昭和12年


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