東京オリンピック誘致で盛り上がるのは今も昔も一緒。盛り上がり過ぎて妙な方向へ行くのも今も昔も一緒。
戦争だのコロナだの失言だの、想定外の出来事でオリンピック開催が怪しくなるのも同じこと。
昭和15年に開催予定だった東京オリンピックでは、日本犬界も国際化へ取り組んでいます。
「海外からの訪日客に恥ずかしい」ということで、まずは街頭での撲殺が主流だった野犬駆除の改善がはかられました。同時に、無責任極まりない飼育マナーの改善も進められました。
中には、お祭り気分で妙な提案をしてしまった団体もありました。
東京五輪で浮かれまくっていたその団体こそが、お堅いイメージのKV(帝国軍用犬協会)だったりするワケです。まあ、大島又彦KV会長はオリンピック開催委員でしたし、全くの無関係ではないのですが。
軍用犬の競技を、次回の東京オリンピツク大會に加へようといふ運動が起つてゐる。帝國軍用犬協會大阪支部では、理事會開催の際、軍用犬の競技をオリンピツク大會の種目に加へてはいかゞとの意見が出て、委員に付託研究中であつたが、いよ〃委員間の意見が纏まつたので近く正式決定のうへ、大阪支部より帝國軍用犬協會本部に對し右の趣旨オリンピツク委員會と折衝せしむべく提案することになつた。
オリンピツク競技には馬術の種目もあるので、犬の競技はいけないといふ理由はなく、もし正式種目に加へられぬ場合は、オープン競技としてゞもよく、ドイツ、イギリス、フランスなど優秀な軍用犬を多數擁してゐる國は、欣然参加するだらうといふのが大阪支部の觀方である。右に關し大阪支部の本庄三郎氏は語る。
「大阪支部としては、本部を動かして是非實現させたいと思つてゐますが、本部よりオリンピツク委員會に對する具體的交渉の方針や、競技方法の實際についてなどはまだ詳しく考究してゐるわけではありません。
これがもし實現すれば、歐米先進國の軍用犬訓練の實情も紹介され、わが軍用犬の普及や訓練に好い刺激を與へることゝ思ひ、この加入運動に大阪が先鞭をつけようといふわけです」
『オリンピツクに軍犬競技を・軍犬大阪支部の提案』より