大正時代の絵葉書より
紀元前にチベットあたりで作出され、中国を経て欧州各国で愛玩犬として飼育されてきた小型犬。
名前の由来については「皺くちゃの顔が拳骨に似ていることから、ラテン語の「パグナス(握りこぶし)」が短縮されてパグとなった」など諸説あります。
そのブサかわいい姿が人気の犬であり、映画などにも度々出演。
マンガでは「小春びより」の小春とか、宇宙兄弟で六太が(日々人だっけ?)が飼っているアポとか、
……あと何かありました?
紀元前から隣の中国にいた犬なので、日本に渡来した時期は結構早かったのかもしれませんね。
しかし
相も変わらず、
例によって例の如く、
碌に調べていないのを誤魔化す為に、
Wikipediaでは「日本には第二次大戦後に紹介された
」などと解説されております(2013年3月現在)。
犬の日本史を取り上げた本やサイトは山ほどありますが、手抜き解説を見分けるのはカンタンです。
「〇〇は戦後から~」という言葉を軽々しく用いているのは、大概が真面目に調べていません。調べていればイヤでもその部分には慎重になる筈。
「だって昔の記録を調べるのが面倒くさかったんスよー」と白状しているようなものです。
そのように近代日本を軽視しておいて、近代日本の畜犬史を語れる訳がないでしょう。
幕末で鎖国政策を終えた我が国は諸外国のモノや知識を貪欲に吸収してきました。
文明開化とか富国強兵とか殖産興業とかは歴史の授業で習いますよね。
家畜やペットの分野だって同じこと。
明治元年から戦況激化で犬の輸入が途絶する昭和15年までの長い期間に、「一度もパグが輸入されなかった」などと考える方がおかしいのです。
調べる気が無いのならば、正直に「パグの来日時期は不明」と書けばいいのにねえ。
某大河ドラマのように、太閤様の時代から輸入されていたかどうかは分りません。
しかし、きちんと調べもしないで「パグが紹介されたのは戦後から~」で片付けるのは只の怠慢です。
何かしらの体裁が必要ならば「本格的な輸入は戦後から」あたりの説明が妥当でしょう。
だって、日本人は明治時代からパグを知っていましたから↓
足立美堅著「いぬ」より、パグの図とその解説。 明治42年
報道資料の場合、パグが登場するのは大正時代のこと。
大正元年の東京朝日新聞には、「ロシアンウルフドッグ(ボルゾイ)と共にパッグが輸入された」という記事と、来日したパグの写真が掲載されています。
第二次大戦どころか第一次大戦よりも前に来日していた訳ですね。
公的機関の史料にパグの名が載ったのは大正2年。
この年、日本陸軍歩兵学校が作成した軍用犬種の候補リストに「パッグ」の名が記されています。
残念ながら、マルチーズやポメラニアンと違って戦前のペット業界でパグが流通していた形跡はありません。
希少な犬だったことは確かですが、「第二次大戦後から~」という解説が誤りであることも同じく確かです。
戦前のパグたちを無視することは、「日本のパグ史」にとっても不幸なことでしょう。
↧
パグ
↧