犬の研究社および帝國軍用犬協會の編集者
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此重大時局下、先づ以て會員皆さんの御健康を祈ります。
小生永らく犬の研究社に勤務致して居りましたが、今回突然當編輯部に招かれる事になりました。何卒宜敷御指導の程御願ひ申上げる次第であります。
曩に金子氏勇躍應召、不取敢大橋氏が兼務される事になつた事は皆さん既に御承知の筈ですが、氏もなか〃御多忙な體、皆さんの方がよりすれば此小冊子編輯、易々たるものと見へるかも知れませんが、なか〃最近さうは行かないのです。
即ち之れに伴ふ付帯業務として要路に出す書類の数々、紙を貰ふ為めの手續き、更に軍の検閲を受けて印刷、製本に至るまで相當の日数と考慮を要するのであります。
そこで他に適任者も急に見當らず、竟に小生に御用命。勿論小生尚更不適任者故再三辞退致しましたが、到頭當分御手傳と云ふ事で御引受する事になりました。
今後大橋氏の御指導の下、及ばず乍ら努力したいと存じます。何分宜敷御願ひ申します。
KV会報より 昭和19年
戦争後期になると、会員の出征や飼料の確保難などで、内地の畜犬団体も次々に活動を停止していきます。
ペット雑誌を刊行していた白木正光率いる「犬の研究社」もそのひとつ。
昭和18年に解散した同社編集者のうち、まだ活動を継続している帝國軍用犬協會へ転籍したのが長山さんでした。
彼の再就職は昭和19年6月のこと。戦争末期における出版の苦労がイロイロ記されていて興味深いですね。
これから半年後には帝国軍用犬協會も活動を停止し、ペット毛皮供出の嵐が吹き荒れるのです。
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長山厚
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