戦時中、関東軍軍犬育成所は奇妙な三輪車を製作します。
これは自転車を三輪型とし、延長したフレームの左右に犬を繋ぎ、左右のハンドルに接続した「手綱」を後方の座席から引くことで前輪の進行方向を変える「犬牽車」でした。
例えると、犬で牽くケッテンクラートみたいなもんですかね。
ほぼ同じコンセプトで開発された、第二次大戦中のドイツ版犬車。
満洲国版は、上の画像の先端部分(ドイツ兵たちが引っ張っている箇所)に自転車のハンドルと前輪が附いているような外見でした。説明しようにも、設計図しか残っていないのが儘ならねえッス。
満洲の犬車、「どうせ試作品で終わったんだろ」などと思っていたんですけど、コレが実際に配備されていた記録を発見。調べてみるもんですねえ。
ただし、実戦で大活躍したとかいう記録はありません。
科學兵器の素晴しい發展と共に軍用犬の利用價値が低下したかのやうに思はれてゐるが、二十九日満洲國軍では國軍考案による快速輓曳犬演習を新京南嶺草原に華々しく展開。軍用犬利用に一大エポツクを畫し注目を置いた。
治安部獣医科中川上尉は軍用犬が主として傳令、通信等に廣く利用されてゐるが、戦闘は近代兵器の登場によつて電撃戦となつてから、軍用犬の活動力が漸次貧弱になりつゝあるので、軍用犬を電撃戦に即應したものに使用したいとかねて研究中のところ、四月末「狼がその速力を利用して餌物に襲ひかゝる性能」にヒントを得、これを犬に試験したところ非常に好結果を生み、この輓曳犬部隊の發案となり、今回最初の演習を行つたもの。
同部隊は三輪車を犬に曳かせ、車上には兵三人並びに武器を載せ、快速を利用して洗滌を縦横に駆けるほか、傷病兵の収容にあたるものであるが、使用犬はシエパード、その他軍用犬の高級なものでなくとも野良犬を二、三ヶ月訓練すると立派に役立ち、また三輪車も低廉に出來る簡易便利なもので、今次欧州大戦時ベルギーで一時研究されたことがあるといふだけだから、同部隊の誕生は世界で國軍が最初といふわけだ。
満洲日日「新に輓曳犬部隊 國軍苦心の訓練に凱歌」より 昭和17年