Quantcast
Channel: 帝國ノ犬達
Viewing all articles
Browse latest Browse all 4169

伊藤さんの檄文・警察犬復活編

$
0
0

日本シェパード倶楽部(NSC)の幹部であり、満州事変で那智・金剛の主人である板倉大尉(NSCメンバー)が戦死するやNSCの親軍路線転換を主張し、それが受け入れられずに脱退して帝国軍用犬協会(KV)を設立。

直後にKVがやらかした不正血統書事件を内部告発するも除名され、かつて袂を分かった日本シェパード犬協会の旧NSCメンバーに再接近。敵の敵は味方ということで受け入れられると、対KVの論陣を張りまくる。

その無謀な行動力で日本犬界を大混乱に陥れた、伊藤藤一氏による警察犬評をどうぞ。

 

 

警視廳が昭和十二年度豫算に少額ながら犬採用に要する経費を計上し、府會の通過を看たことは、犬界に對する大きな衝動である。

 

曩きに、陸軍豫算に犬採用に要する経費を計上し、議會の協賛を経たのは昭和八年の春であつて、恰も吾人が帝國軍用犬協會を創立して、犬界に協力を冀ふてゐた時のことである。

爾來、両三年に亘る犬界の隆盛は、我國畜犬史上空前のことであつて、真に百花繚乱の姿を具眼したのであつた。

 

然るに、這般の警視廳の犬採用に對する犬界人の関心は頗る低調であつて、多くの反響を齎さぬといふ奇現象を呈してゐるのである。

吾人はNSC以來、久しく「警察犬へ」なるスローガンを掲げて、之が實現を期したのであるが、漸く之が實行の緒に就かんとする今日に於て、犬界人の之に對する熱意が極めて冷淡であり、興味薄であることは、如何にも遺憾に堪へないことである。この問に處してNSCの遺傳を受け継いで、シエパード犬本來の使命達成に精進すべきJSVが袖手傍観の態にあることは頗る怪訝に堪へないことである。

 

吾人は持論として一犬種、一犬籍簿を主張し、一協會の指導統制下に於て、之が發達を助長進展すべきであるとの信念を抱くものであるが、不幸にして二つの協會が對立し、その勢力を縦断してゐる現状に於て、KVは軍用犬といふ使命を帯びてゐるとすれば、JSVは他方面、即ち警察犬への新方途を拓き、社會一般の福祉に寄與することが急務であり、且つ至當である。

然るに、この好機が對岸の火災視され、徒らに看過されてゐることは、吾人の等しく遺憾とするところ、犬界の為めにJSVの奮起を望むこと切なるものがある。

 

吾人は自分の蕃殖した犬を近傍の駐在所巡査に寄贈し、自分の指揮下に置いて放火犯人を捕へた最近の實例を持つてゐるが、斯の如く警察用として使役したる犬が、着々實績を挙ぐることを得ば、百千の議論を闘はすよりも効果的である。

シエパード犬の用途は多岐多方面であるが、警察用に使役するものは訓練の最高度に達するものなることを要するが為めに、之が訓育に當るものは、犬に関する深き知識を要することは論を俟たないから、斯界の権威を集めてゐると看られてゐるJSVは、之が先頭に立つてその蘊蓄を傾倒して、實績を挙ぐるやう努力すべきである。

 

茲に於て吾人は再びJSVの奮起を促し、犬界への喝を入れんことを望むものである。然らざれば犬界人はJSVをも見限り、沈滞的空氣は一層深まり行くものと見做さなければならない。而して従來の如き形式的訓練方法から逸脱して、真に自然科學に立脚する訓練方式を按出するやう努力すべきである。

 

「警察犬を成功せしめよ」より 昭和12年

 

ご自身がKVとJSVの争いの原因であったことも忘れたのか、なかなかの他人事っぷりですね。

KVが警察犬復活を推進していたのは事実であり、軍用犬養成所の使用を警視庁に許可するなど、警視廳警察犬の復活に多大な貢献をしております。

しかし、伊藤さんが訝るようにJSVの動きはサッパリ分かんないんですよ。警視廳に協力していたメンバーはいたものの、組織として動いた形跡が皆無。KVへの対抗心だったんですかね?

 


Viewing all articles
Browse latest Browse all 4169

Trending Articles