大正13年5月14日診察
全国日本テリア共進会
昭和9年5月14日、名古屋松坂屋屋上にて開催。
五月十四日午後七時情報に接し于監吏外四名(監視犬マルス號、ノルド號同伴)は田家付属地北入口に警戒張込を爲し、潜伏待機すること實に六時間、即ち午前二時半頃に至り宮家屯より潜行し來れる密輸團百餘名を発見す。
仍て直に散開し前方よりマルス號を、側面よりノルド號をして襲撃せしむると共に監視犬取扱者以外は速に鐡道線路を占拠し有利の隊形を採り以て一挙制圧の方策に出でんとしたるに、右計画を察知せるにや密輸團護衛ギヤング二十余名は逸早く棍棒投石に依り抵抗を開始し、團員大挙して線路伝いに襲撃し來たり。
衝突形勢一時逆賭し難き事態にありしが、監視人犬必死となりて防戰し、監視犬を鐡道線路に進出せしめて尚も頑強に反抗し來る一味に對し猛烈なる襲撃を加へしめ、遂に浮足立ちたるに乗じ拳銃の威嚇発射を試み、漸く之を州内に遁走退散せしめ、放棄せる人絹布十七疋を押収するを得たり。
満州国税関監視犬月報 昭和11年
去る五月十四日、臺湾日報三面の三段抜きトツプニユースに初號活字で「高雄が産んだ名犬ドルフ、元気で奮闘中との消息に、献納主の感激」と云ふ記事が出て、私共を非常に喜ばした。
その名犬ドルフとは高雄萩原重安氏の愛犬ドルフ號である。
ドルフは體型は優級、軍犬候補検査も優秀な成績でパスし、訓練競技會では第一席と云ふ實戦向きの犬である。
〇〇軍〇〇と共に私共の頭に浮んだ「あれならと云ふ民間軍用犬の中」最初に頭に浮んだのが萩原氏のドルフであつた。
此の犬は確か七歳位ではなからうか。實に圓熟した技の持主で、資格こそ持たないが、近頃では獨逸本場のメルデフンド(伝令犬資格犬)やポリツアイフンド(警察犬資格犬)であつた。臺湾全島で名訓練犬ドルフの名を知らない者はない。斯様な犬をポンと軍に提供する萩原さんも素晴らしいものであるが、これを使役する高橋部隊の軍犬班は實に幸福である。
兎に角、今度の臺湾部隊の軍犬はドルフはじめ名犬揃いである。
出征時のドルフ。 昭和13年