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Channel: 帝國ノ犬達
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8月10日の犬たち

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・昭和14年8月10日木曜日
ブラッツ、ゼッツの復習、運動各30分。リタに対しては誘導把の装着訓練。この3日間で、ヒア(招致)やナイン(不可)の要領も学習。
蟻川氏が豫想以上に『リタ』の懐きが早いと云ふので、愈々本格的訓練を初める爲めに誘導把を持つて來られた。初めて手に触れた時、此の把手を握つて誘導されるのかと思ふと、一縷の光明を得た様に思つた。話には聞いて居たが、誘導把を付けると犬は大きな責任を負はされた様に非常に緊張する。先づ訓練の爲誘導把に掴まつて屋外に出た。蟻川氏に指導されて誘導法をイロイロ行つたが中々慎重に誘導して呉れた。訓練を済ませ、室に帰り誘導把を外すと、ベツトの下に飛び込んでぐつたりとした様子だつた。夫れは誘導把を付けると犬が非常に緊張するからだそうである。夫れで外すと責任を果したと思つて楽な氣持に成るのである。今日はもう大變好く懐いて、食事の時ベツトの下に置いて私一人が食卓に行くと『クンクン』鼻を鳴らして淋しがる。早速傍に連れて來て食事をしたが、もう大丈夫と思つた。若し一人で室を出た後、帰つて來ると飛び付いて来て何故連れて行かなかつたと言つた様な恰好で顔を摺り寄せて來る。斯んなに馴れるとニ、三歩犬から離れるのでも連れて歩き度い様な氣がする。『リタ』に大変蚤が居ると云ふので、婦長殿(※藤川ハナ氏)と二人で薬湯を使はせた。婦長殿も大變熱心に世話して下さるので、其の都度教へられる所が非常に多い(平田軍曹)
陸軍省醫務局『戰盲勇士の誘導犬記』より


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