臺灣には犬が非常に多く、田舎へ行くと豚より多い位と云ふので畜犬税を創始して統制を計れとの要求が十一月十五日の臺灣日々に出てゐた。
「ドツグワールド」より 昭和8年
十一月十五日午後八時、板橋區板橋四の一四二五荒井安久太郎氏方の玄關で「今晩は」とやさしく呼ぶ聲がするので、妻かねさんがくゞり戸をあけると、卅歳ぐらゐの黒の中折帽をまぶかにかぶり襟巻きで覆面し、ラシヤのモヂリ外套をきた五尺一、二寸の男が、月光を受けた細身の刺身庖丁をイキナリ突きつけ「金を出せ」と型通りに脅迫、かねさんは驚いてタタキと座敷の間の腰板障子をしめ、追ひすがる賊を締め出したが、この物音に奥十二畳の間で床に入つたばかり、安久太郎氏が起き出たのを見て、「泥棒だから金を出してやりなさい」とすゝめ茶箪笥から四圓入りの蟇口をとり出し障子の間から投げ與へると賊は金だけをとり「もつと出せ」と庖丁を障子の間から光らせた。
この時、外縁の下の犬小屋から愛犬ポチがほえる声に、賊は大いに驚きそのまゝ逃走した。
殊勲のポチは長男喜美君が昨年から父の反對を押し切り飼つてゐる小犬である。
「吠立てゝ賊を追払ふ」 昭和9年
創立滿五周年記念事業の一たる軍用犬行進歌詞懸賞募集は十一月十五日締切り、應募歌詞約三百編を菊池寛氏、碓氷元氏の手にて審査選考中の所、その一席を決定、左氏に賞金壱百円を贈呈した。
入選 鳥越強氏
平林家畜病院『狂犬病予防注射控簿 昭和十三年十月廿七日以降』より
いずれも昭和18年11月15日診察