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11月17日の犬たち

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善通寺

第十一師團では軍用犬を飼養し通信斥候等に充つる爲め、千葉の陸軍歩兵學校で飼うてゐたシエパード種三頭、ドーベルマン種一頭、都合四頭を全國師團に率先して譲くるに付、其飼養教練方を練習の爲、歩兵四四聯隊の依田軍曹以下九名、去る十一月十七日から同校へ派遣され、又飼養主任小川中尉も此程同校へ派遣見學せしめた。

犬は軍曹と同道、二十五日午後善通寺町に着、直に師團司令部の前庭の新犬舎内へ嬉々として這入つた。是から大麻山を始め四國山岳原野を跋渉してワン〃と叫びつゝ任務を果すのである。

『第十一師團へ軍用犬着す』より 昭和6年

 

 

犬

 

昭和十年度 帝國軍用犬協會大阪支部 第三回軍用犬大展覧會
開催場所 阪神甲子園(南運動場隣)
日時 昭和10年11月17日(日曜日)
自午前8時~至午後5時 時雨不拘
帝國ノ犬達-軍用犬展覧会
軍用犬大展覧会入賞犬の盾。

 

日本シェパード犬協会手話十五年秋季全国展

日時 昭和十五年十一月十七日
場所 大阪市櫻ノ宮公園
出陳頭数 147頭
今季は京都の中西審査員がホンの先頃他界し、大阪の細谷審査員も死線をやつと脱して静養中の事とて、審査陣には一抹の淋しさを感じられた。
細谷審査員の欠場について一つ思ひ起す事がある。
それは何時かこの會場で同氏が審査の合間にマイクの前で最後の比較審査を放送した時のである。受審してゐるのは獨逸人カール・ミユーラー氏と内地の各愛犬家とであつた。
何れも吾れこそ一席と一心不乱に席次を争つてゐた時、黄色い大きな聲がマイクを通じて傳はつて來た。
只今第二番目を走つてゐるのは獨逸人カール、ミユーラー氏。その次は某、こゝにも日獨防共の親善振りを發揮してゐます……、と。
思へばその頃、日獨防共協定の生れた時分の事である。
一般観衆はこの巧みな比喩に少なからず心を引かれて、思はずマイクの方に顔を向けるものもあつた。リンクでは將に決定せんとする一歩手前の大熱戰を演じてゐる。
かうした細谷氏の素人ばなれした放送は其後も折々同好間の話題に上つてゐる。
   ×     ×     ×
指導手の中で女の人がエプロン姿甲斐々々しく愛犬の審査を受けてゐるのがあつた。
何だかなごやかな感じがした。然し受審はやつぱり走り得る軽装の方がズツトよい。出犬して愛犬をなるべくよく見せやうとするのも一つのスポーツではある以上動き易い扮装が犬にも、自分にも都合がよい。
吾々は犬は唯男の獨占物たらず、女の人にも、子供にも愛されて出陳されなければならない事を深く感ずる。だから今後も機敏な女の指導手や、若い青年達によつてドンドン出陳されん事を望むものである。
   ×     ×     ×
ベンチを覗いてみると入口には毛布を垂れて一般観衆から出陳犬を全く隔離してゐる姿をチヨイチヨイと見た。筆者は何故斯様に物に蓋を被せる様な事をするのか譯が分らなかつた。
犬に近づくと咬むおそれがあるからなのか、それとも犬をムザムザと見せるのが惜しいからなのか。
判じ難いのは愛犬家の心理状態である。
   ×     ×     ×
出陳申込書の犬名や犬舎號を見てゐると實に六ケしい名前のがある。
筆者は獨逸語はもとより凡そ外國語と名のつくものに通じない勢もあらうが餘計にその六ケしさを感ずる。果して犬を持つ凡ての愛犬家がそれを見て判るのかしら。
假名で書いても讀みが判らないのに、欧文で書かれて、殊にその欧文の綴りが大間違ひした時に何と讀むのか何と發音するのかチンプンカンプンな場合が非常に多い。こんな不自由な而も読みにくい名をつけて得意然とするのも愛犬家の心理なのだらうか。
何時迄も獨逸ヂヤない。
タツタ今又外國名全廃といふ時機が來ないとも限らない。
早く醒めて吾々の耳になれ、口に云ひ易い國粋かつける様にしたらどうか。
(芝池記)

 

平林家畜病院『狂犬病予防注射控簿 昭和十三年十月廿七日以降』より

昭和18年11月17日診察 


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