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12月2日の犬たち

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『東葛家畜病院亀戸分院『診察簿 大正十二年六月二十一日以降』より

いずれも大正12年12月2日診察 

 

三重縣南牟婁郡の愛犬家、小舟氏の紀州犬が去る十二月二日突然苦悶しだし、間もなく絶命。嘱望されてゐただけに各方面で惜しまれたが、木本署江見獣醫が解剖したところ猫いらずを食べた結果と判明した。
その後六日、七日両日またも加田、谷川両氏の紀州犬が猫いらずのために斃れたので、この異變に紀州犬
南牟婁保存會では、これが對策につき幹部會を開催。
故意にやつたか、または拾ひ食ひの結果かどうかは別として、一般愛犬家はこの際充分飼育管理に注意されるやう、との警告を發した。
「紀州犬の變死頻々」より 昭和9年

 

第十二師團が全國師團に魁けて民間軍用犬の預託規定を制定し、右規定に基いて大村歩兵第四十六聯隊が長崎縣下の帝國軍用犬協會所属犬七頭が入隊したのは今夏八月三十日であつたが、爾来聯隊軍用犬班の連日連夜の猛訓練を経て各種の訓練を體得し、十二月二日除隊となつたが、退営後も三ヶ年は在郷犬として義務を負ふことになつてゐる。
「軍用犬の除隊」より 昭和10年

 

犬
軍艦八雲の砲術長であらせられる久邇宮朝融王殿下には、御来艦の東洋各地巡航を機會に、十二月二日朝鮮仁川に御上陸、帝犬朝鮮支部會員の愛犬を御覧遊ばされたことは既報したが、更に十二月十七日は青島に御上陸、日本軍用犬として最も古い青島シエパードの代表犬を御覧あり、続いて上海では東洋一の大犬舎と云はれるデニーケンネルを御訪問。
又正月七日には甲子園一楽荘に台臨、二時間に亘つて仔細に諸名犬を御覧賞遊ばされ、阪神の有名愛犬家とも親しくお談話を交された。
その御熱心には一般愛犬家も大に学ぶべきものがあらう。上は青島にて青島シエパード御台覧中の光景で、中央外套を召されるのが殿下。

「畏し久邇宮帝犬總裁宮 東洋の各犬舎御巡歴」より 昭和11年 

 

昭和十二年十二月二日 社團法人帝國軍用犬協會関北支部
松本殿
軍犬献納ニ關スル件


謹啓 時下寒氣厳シキ折柄、益ゝ御清栄ノ段奉大賀候。陳者、貴殿今般軍犬献納ノ趣、時局ニ鑑ミ軍犬報國二對シ敬服仕候。
早速本部宛其后ノ様子ヲ照會ト同時ニ本人ハ第十四師團ヘ献納ノ旨ヲ申置候。
尚、本日第十四師團司令部へ尋ネ候處、司令部ハ勿論大歓迎ニシテ本部ヨリノ回答ニヨリ、右師團ヘ献納ト決定次第ハ該犬ノ血統書必要ノ趣ニ付、御承知クダサル様願上候。
以上乱筆ニテ右御知ラセ迄。

 

 

 

平林家畜病院『狂犬病予防注射控簿 昭和十三年十月廿七日以降』より

いずれも昭和15年12月2日診察 

 

私は昭和十四年〇月〇日内地仙臺市より軍犬として勇躍渡滿する光榮に浴し、斯くして〇日に亘る陸海の輸送も無事、大陸の第一歩を踏む大連港に上陸し、大休止後大連發〇時間後遼陽驛に到着するや、所員及我々を訓育する将兵〇〇〇名が驛構内に出迎へて呉れた時、僕は此れ程うれしかつた事は有りませんでした。

同時に誰が僕の訓練者だらう、出來得る事なら親切な短氣でない第二の主人を迎へ難いものだと念願せざるを得なかつた。

處が計らずも僕を訓練する人は今回の教育教官で、然も仙臺出身の〇〇少尉で、初めて箱より出して貰ふと直ぐ、君は僕の部隊に補充になるんだよ。今日から僕が約一ヶ月餘教育して一緒に任地に生死を共にするのだ。何にも心配するに及ばん。第一保健に注意し誠心誠意努力するんだ。

決して他犬と喧嘩口論するんぢや無い、と注意して呉れた時から此の〇〇少尉が好きになり、一ヶ月間の速成訓練の査閲も良好なる成績にて終了し、〇月〇日任地黒河省(現在の黒竜江省)勝武屯に到着しました。

當時郷里仙臺の真冬の一番寒い時より若干楽な位の寒さで驚かざるを得なかつた。到着の第一夜は先輩と共に煉瓦建の立派な軍犬舎に行く(犬房三平方米、前庭三平方米のコンクリート叩)之は君の犬舎だ。ヨゴスナと仙臺弁で言ふて休ませて貰ひ、旅行中の披露を充分恢復する程休養し、翌朝先輩達と共に野外手入場に繋留されたら、先輩のアルフ號君が僕の側で無闇に僕を見て怒つて居りますので、僕の訓練者(當部隊の軍犬班長)が不可ナイと強い聲で怒りましたら、アルフ君すつかり伏臥して悪びれて居りました。

處が後で聞けばアルフ君は我が軍犬班中一、二位の優秀犬で一番喧嘩好との事です。

其後君達は今度内地から急に寒い處に來たから寒地に馴致して後、訓練勤務に服すのだと言ふて逐次馴致訓練を一月下旬迄毎日實施せられ、其間一番寒いのは零下三八度位だつたと記憶して居ります。此訓練も無事終り、十二月二日に班長の命に依りいよ〃第一線たる江岸勤務を命ぜられ、訓練助手たる某一等兵と共に警備の任に就いて毎日巡察、斥候、警戒の重任を寒氣を克服しつゝ無事果し、間もなく第一線の正月を迎へました。

其の際兵隊さんに内地から正月だと言ふて御餅や色々な慰問品が参りましたが、僕等軍犬は同地にて同様警備勤務に服して居るが、唯一人として慰問品が來ないので何となく心細く感じました。銃護の皆々様は吾々の苦闘は充分知つて居つても、慰問品の事迄は御氣附無いものと思ひ、茲に一同を代表して申上げる次第です。

尚其外、僕が北滿の雪積地帯で心細く感じた事を末書し、参考に致したいと思ひます。

軍犬にも偽装衣の必要を痛切に感じました。白色雪積地帯で兵隊さんは白衣を着て充分偽装して居るのに、僕は黒色毛を露出して第一線を横行するので敵から直ぐ發見せられ、兵隊さんに迷惑を掛けはせんかと思ひます。

而し近日中に僕の取扱者が慰問袋を縫ひ合せて偽装衣を作つて呉れるとの事でしたから、一日も早くと待つて居る次第です。

今後は偽装衣を着て、訓練者と寝食を共にし、人犬一體となり存分活動し、當部隊の任務遂行に貢献し、物言わぬ勇士の意氣を示し、将來軍犬の亀鑑たらんとする覚悟です

筆者不明『僕は北満警備のシエパード犬種です』より  昭和16年


 


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