高槻さんは人も知る仙臺市内での愛犬家。
「現在うちには獨逸ポインター二頭、英ポ二頭、柴犬一頭、ドーベルマン二頭、フオツクステリヤ二頭と、皆で現在、九頭ゐますがね。其のうち獨ポも英ポも、兩方とも中央畜犬協會の名誉賞を持つてゐますよ」と、是は又大したもの。
「市内ですか。殆んど見るべき犬はゐませんよ。どうも皆さんが熱心が足りないですね。御社の方でゞも少し書き立てゝ應援でもしてくれますと確かに盛んになつて來ますがね。
僕等が犬の會を始めて犬の改良を叫んでも、直き潰れてしひますからね。どうも困つたものですよ。
私の持論としては、どんな駄犬を飼つても手數と取扱は名犬と何等變る處がないのですから、いゝものを飼へと云ふのですよ。
駄犬だと、ナーニ、ロクなものぢやないのだからと益々粗末にして、遂に駄犬を益々駄犬にしてしまひますからね。全く手數と取扱は結局同じですからね。
えゝ仙臺にですか。中央畜犬展に出せるやうなものは一頭も居るまいね。要するに熱心が足りんですよ。
獵犬ですか。是又、トント吟味してゐませんね。ナンでも構はんと云ふ風ですね。獵に連れて行けば獵犬だと思つてますからね。どうも研究が足りないですよ。
どうぞ御社の方でも大いに奔走して何かと會合などには出席して書いて下さいよ。少しは理解して來ませうからね……」
と、流石仙臺での愛犬紳士は卓説を持つて居られる。
『仙臺市内愛犬家を訪ねて・元寺小路の高槻醫院の巻』より 昭和13年