大正4年6月、新潟県で狂犬病が流行します。その際、犬だけではなく猫も防疫対象となりました（飼い猫に感染したのでしょうか）。
猫の狂犬病感染事例は幾つか紹介してきたものの、行政機関が猫に対して狂犬病対策をとった記録は初めて見ます。
新潟縣令第三十九號（大正四年六月十二日）
第一條
獸疫豫防法第十二條に依り左記區域を限り犬（狆を含む以下同じ）の出入を停止す。
△中魚沼郡△南魚沼郡△北魚沼郡川井村、川口村、田麥山村、山邊村、吉谷村、域川村、小千谷町
第二條
前條所定の區域内に於ける犬の所有者又は管理者は當分の内其犬を厳重に繋留すべし
第三條
繋留せざる犬は所有者なきものと看做し之を撲殺することあるべし
第四條
第二條の規定に違反したる者は科料に處す
新潟縣知事 坂伸輔
新潟縣令第四十號（前同日）
第一條
狂犬病豫防の爲め左記區域に於ける猫の所有者又は管理者は當分の内其猫を適當の場所に繋留すべし
△中魚沼郡上郷村、水澤村、秋成村、下船渡村、中深見村、眞人村△南魚沼郡六日町△北魚沼郡小千谷町、田麥山村
第二條
繋留せざる猫は所有者なきものと看做し之を撲殺することあるべし
第三條
第一條の規定に違反したる者は科料に處す
新潟縣令第四十一號（前同日）
犬又は猫の咬傷を受けたる者は其住所氏名及咬傷の部位を直ちに書面若くは口頭を以て所轄警察巡査派出所、巡査駐在所又は町村役場に届出べし
新潟縣訓令第十六號（前同日）
警察署、同分署、町村役場
町村役場に於て大正四年縣令第四十一號の届出を受けたるときは速に警察署、巡査派出所又は巡査駐在所に通報すべし
前項の通報又は該届出を受けたる巡査派出所又は巡査駐在所は所轄警察官署に、警察官署は當廳何れも即報すべし
防疫措置にもかかわらず、10月に入ると狂犬病感染は拡大。多数の町村が警戒区域へ追加されています。
新潟縣令第七十五號（大正四年十月八日）
大正四年六月縣令第三十九號第一條中に左の通り追加す
本令は發布の日より之を施行す
岩塚村の下に「塚山村、潟才村、日越村、王寺川村、關原村、宮本村、大積村、日吉村、脇野町村、大津村、黑川村、與板町」
○古志郡○長岡市○刈羽郡柏崎町、此角村、大洲村、下宿村、鯨波村、枇杷島村、上條村、高田村、野田村、鵜川村、荒濱村、中通村、田尻村、北條村、北鯖石村、中鯖石村、南鯖石村、石黑村、高柳村、上小國村、中里村、山横澤村、横澤村、武石村、千谷澤村、七日町村○東頸城郡○中頸城郡金谷村、春日村、直江津町、谷濱村、桑取村、有田村、新道村、津有村、新井町、三郷村、高士村、菅原村、櫛池村、板倉村、和田村、斐太村、矢代村、鳥坂村、水上村、泉村、水原村、寺野村、平丸村、上郷村、原通村、大鹿村、豊葦村、中郷村、關山村、名香山村、杉野澤村、里五十公野村、上杉村、美守村、諏訪村、保倉村、大湊村、八千浦村、潟町村○高田市
新潟縣令第七十六號
大正四年六月縣令第四十號は之を廃止す