北支事変を前端として時局愈々重大化するを見、支部會員の平常抱懐する軍犬報國の熱情は献金募集の姿となつて現はれた。
支部會員有志は七月以来八月末迄、連夜札幌の繁華街狸小路街頭にメガホンを握つて大衆に呼びかけた。
傍には平生より訓練宜しきを得た愛犬が「國防献金」と書いた箱を咥へて据座し、瞳を輝かせて道行く人に献金を要求して居る様だ。
その姿は可憐であり亦健気であつて通行者の足を留めずには置かない。

此の様に人犬一如となつて叫び続けた結果は意外の好成績にて充分其の目的を達する事が出来た。
集つた献金は毎夜警察署に於て署員立會の許に開函計算し、累計金六百六圓二十七銭となつた。
此の處分は次に示す通りである。
一、金五百五拾六圓弐拾七銭 札幌聯隊司令部へ委託す
一、金五拾圓 軍用犬慰問資金として本部へ委託す
右計 金六百六拾六圓弐拾七銭
「西武北海道支部でも献金運動」より