生年月日 不明
犬種 不明
性別 不明
地域 福島県
フク號は、仙臺支部會員、池田三郎氏の〇〇〇〇に献納せられたるもので、〇〇部隊に属して出征し各地に於て軍犬の任務を全ふし、其都度池田氏に對して通信あり、池田氏もしの武運を祈り、尚、お國の為になる様にと神かけてゐたが、その甲斐もなく、五月雨降る六月中旬悲しや戦死の報が部隊から齎された。
同時に遺毛をも送つて来た。
思ひは池田氏が此のフク號を昭和十二年帝犬軍用犬養成所に委託して訓練をなし、帰つた時は郡山小学校で訓練の實演を公開して一般に軍用犬の智識を植え、献納に際しては街道に進出して出征軍犬の為めに慰問金を集め、其の額二十余圓に達して仙臺支部を経て陸軍省に献納した。
出征前、即ち銃後に於ても軍用犬の本分を充分に発揮して、出征後は部隊長の通知の如く各地に於て戦功をたて、フク號一代とし、又献納者たる池田氏としてもフク號のなせし事實を顧みれば悲しき涙は喜びの涙と変るであらう。
世の軍用犬種を一種の骨董扱ひにしてゐる連中は、これを聞いて恥ずかしくはないかと思はざるものがあつた。
「軍犬フク號の戦死」より 昭和15年
骨董扱いも何も、他人様の愛犬にナニを強要しているんですかね。
しかし、コレが銃後日本の実態でした。
御国の為に供出した愛犬が戦地で犠牲となっている中、「このご時世でも、軍用犬種なら大っぴらに犬が飼える」という人を見れば、腹が立つのも理解できますけど。
で、「皆さんもシェパードを供出しましょう」という同調圧力が高まっていった訳です。
原則として、軍部は「愛犬を軍に売ってくれ」と御願いする立場。資源母体たるシェパード飼育者数を維持するため、強要行為はなるべく避けていました。
一番タチが悪かったのが、「皆やっているのにお前は拒否するのか?」と圧力をかけていたこの手の民間人だったのです。
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フク(軍犬)
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