シエパード犬を利用して白魔の犠牲となつた遭難者の死體捜索。
今回山形新聞社の主催にて、奥羽の分水嶺、奥羽山脈中の峻峯、山形・宮城の縣境に聳ゆる海抜1841米の蔵王山の雪の犠牲者、スキーヤー、東京市吏員三名外の死體捜索のため、四月下旬の融雪期を待つて大規模な捜索を行ふが、嗅覚の鋭いシエパードを利用して成功の萬全を期して居る。
若し之が成功の暁は、シエパード犬の本縣に於ける警察犬其の他の使役としての價値が實際に認められるわけであります。
之が我がJSV(日本シェパード犬協會)奥羽支部及、KV(帝國軍用犬協會)山形支部所属犬より捜索訓練の優秀な犬を選抜して、七、八頭を以つて捜索隊を組織して之に當る事になりました。
奥羽支部ではただちに羽吹、小笠原両幹事が委員となつてJSVの名をはずかしめない様なシエパード犬と、之に對するハンドラーの選抜に着手致しました。
捜索の方法其の他の實況は十六ミリにて撮影いたしますから、映畫と同時に貴重な経験談と共に皆様方に御目にかけたひと思ひます。何卒それまでお待ちください。
JSV奥羽支部「奥羽支部の快挙」より 昭和12年
国内では珍しい事に、JSV奥羽支部とKV山形支部は「奥羽シェパード犬界」として一致協力する協定を結んででおります。
両団体がイガミ合い・潰し合いを演じていた他地域では見られない、共存共栄の方針がとられていたんですねえ。
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蔵王スキーヤー遭難事件・昭和12年
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