生年月日 不明
犬種 エアデールテリア
性別 牡
地域 東京市
昭和12年、警視庁が採用した警察犬。渾名はボン公。
復活した警視庁直轄警察犬の中で、最初に容疑者を逮捕したのが暮雲です。
当時の警察犬は大部分がシェパードでしたが、ボン公を含め2頭のエアデールも混じっていました。
「防犯啓発用のお飾りだった」なんて書いている本もありますが、彼等は立派に働いていたのです。
訓練中の暮雲 昭和12年
警視廳では赤羽の(帝国軍用犬)協會養成所内に警察犬々舎を置き、吉岡防犯係長指揮の許に朝倉、片岡両巡査に依つて日夜猛烈な訓練を行つてゐるが、早くも晴々しい初手柄を樹て関係者一同を喜ばした。
去る五月二十五日の昼さがり、朝倉、片岡両氏が訓練の為めエアデール二頭を連れて兵器廠裏の林(稲付町)にさしかゝつた時、突然暮雲がウーツとうなり乍ら警戒し始めた。
「さては何かあるな」と朝倉氏は牽紐を離した所、林の中へ一目散。
たちまち起る吠声に、両巡査が馳せつけて見ると、果して怪しい男がマゴ〃してゐるので、早速赤羽署に連行取調べの結果、この男は住所不定某(二一才)で、昼は林の中で寝て、夜になると附近の工場や建築場に忍び込んで材料を持ち出してゐたもので、約十件の窃盗を自白した。
シエパードのオーデインがぽつくり死んだのは丁度一週間前のこと、すつかり気をくされせてゐたのだが、このお手柄に防犯課の警察犬係一同すつかり喜んで了つた。
殊勲者暮雲に代つて朝倉巡査は語る。
「このエアデールは非常に人なつつこい犬で、シエパードの様に襲撃訓練がうまく入るか心配でしたが、不審者に對して猛烈に向つて行く所を見て案ずる事はないと思ひました。
四月に始めて来た時は何も訓練が出来てゐなかつたのですが、今では基本的のものは一通り出来、捜索も相當上達しました。
實に性能のよい奴です。
今度の小さい手柄に依つても犬がその特性を発揮するならば人間の出来ない仕事でも立派にやれると云ふ事が判ると思ひます。
まだ訓練犬は一頭しかありませんので大した事は出来ませんが、今度入つたドーベルも非常に性能がよいので、これ等が皆訓練出来たら相當の成績を挙げる事が出来ませう」と。
昭和12年
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暮雲(警察犬)
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