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Channel: 帝國ノ犬達
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ブルドッグとフレンチブルドッグの日本史・その5

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我が国のブルの体型推移

伊藤
震災前のブルは、ドツピーにしろケツパーにしろ、體は大きくなく、形が崩れてゐました。
その後體は小振りでも、鼻がつまり、下顎が長く巻上つて、身體の作りも、背や肩、腰のハリが変つて来ました。又耳もローズでなければいけないといふことになり、耳も揃ひました。
中島、鶴見、大津の諸氏が転向して、只今はブルも衰退してゐますが、前川氏だけは、今でも優秀なブルを十頭近く飼つて居ます。
一方水野氏と私は協力して東洋ブルドツグ倶楽部に立籠り、孤軍奮闘してゐます。
ブルドツク衰退の原因と思はれるのは、この犬種はシエパードのやうな使役犬でなく、愛玩犬である為め、骨董趣味的には良い味がありますが、現代とは背馳するのではないかと考へます。
それに非常に難産で、良い仔は體が大きい為め特に難産で、これをしくじると親仔共に殺すことがあります。更に飼育費の相當かゝること、暑さに弱くて夏は苦しむことなどが挙げられます。
鶴見
ブル一頭の費用でワイヤーが十頭は飼へます。
白木
食物は如何なものをやりますか。
伊藤
主に肉ですが、それも生肉をうんとやらぬと體が太らぬし、艶も出ません。
前のお産の話ですが、ブルは何うも仔を育てることが拙手で、身體の下敷にして殺すことが屢々あります。
中島
早い話があの顔では仔の臍の緒を切つたり舐ることも出来ますまい。それに交配させるにも非常に骨が折れます。
伊藤
何しろ、玄人が三、四人がゝりでやるのですから……。
中島
私の今やつてるシエパードなんか、前にブルのお産と交配に骨折つてゐたせいで大変楽です。

ブルに多い病気
白木
水野さん、ブルドツクの病気についてお話し下さい。
水野
難産なのは、佝僂病が原因してゐるんぢやないかと思ひます。
あの特殊な骨格では、骨盤に無理があります。従つてお産も楽ではない筈です。佝僂病になると、餌付が悪くなり、ヴイタミンBが不足勝になります。又太らせやうと生肉を與へる為め、皮膚病に罹り易い處があります。但し、ヂステンパーには強く、滅多に罹りません。
これは體力が良いからでせう。
中島
栄養の良いせいもありませうが、非常にブルは我慢力が強い。
伊藤
體の太い犬には佝僂病が多いやうですが、ブルは體を太らせる必要上、どうしても佝僂病に罹るのです。
水野
ブルに皮膚病が多いのは脂肪が多く、皮膚の厚いためではないかと思ひます。
伊藤
又ブルには特別な體臭がありますな。
鶴見
ブルは心臓が弱いが、これは心臓を圧迫するやうなコンデシヨンが要求されるからで、心臓が強いやうでは優秀なブルドツクとはいへません。それから五、六歳になると、夏よく日射病でやられます。
伊藤
原産地の英國でブルの出来初めは、牛殺しに使はれたものですが、英國ではこれが禁じられた為め、闘犬に用ひられ、それも禁じられて、千八百五、六十年の頃から愛玩犬となつて今日に至つたので、日本人はブルを見ると喧嘩犬だといつてゐますが、これは間違です。
成程、耳を引張つても痛がらぬ點など、昔の喧嘩犬時代の大胆、剛情は性質は残つてゐますが、ブルは決して喧嘩犬ではありません。
水野
皮膚が弱いといふ點で、母親に何ら皮膚病がなくても、仔が不思議にアカラスに罹つたりするのは、隔世遺傳か何かあるのではないかと思ひます。
鶴見
バンクーバーから、初めてブルドツクを輸入した頃は犬が不足してゐたゝめ、盛んに近親交配を行ひ、親仔がけを殊更やつた為めに、皮膚が弱いと云ふ説もあります。
且つ元祖犬キングスグレー・マンゴーワー系の犬は大體弱いのです。



ブルドッグの姿は闘犬から愛玩犬へ改良される中で大きく変化しました。
我が国に渡来したブルドッグたちも、日本人が求める姿へ淘汰されていったことが分ります。
続きは次回。


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