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児童教育と犬(第2回)犬の教材アレコレ

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ボクノウチニハ、ジヨニートイフ シエパードガヰマス。

ボクガ學校カラカヘツテ來ルト、ヨロコンデトビツイテキマス。

アタマヲナゼテヤリマスト、ハナヲクンクンナラシテ カラダヲコスリツケテキマス。

クボサンノゾンネガ オバサマニツレラレテウチノ前ヲトホルト、ジヨニーハ「ボクモイキタイ」トサカンニホエマス。

チヤ目コウ(茶目公)見タイナ目ツキヲシテ、中々ノイタヅラモノデ犬シヤ(犬舎)ノハシラヤユカイタヲ、ガリガリカヂツテハ オカアサマニシカレレテヰマス。

ケレドモ ホントニカハイイトオモヒマス。

碑小学校一年一組 清水明君「ウチ ノ ジヨニー」より 昭和12年

 

「尋常小學國語讀本巻一」より 大正6年

 

前回は近代日本の教育史と犬との関係を説明しました。

戦前の教育はガチガチの国粋主義だったんじゃないの?とか勘違いしている向きもありますが、鎖国政策は幕末で終了しております。

近代日本は海外の文化を学びながら発展しました。当然ながら、戦前の教科書にだって西洋や中国の教材は載っています。

尋常小学校で取り上げられるのは日本の皇族・武将・軍人のみならず、コロンブスやエジソンやジェンナーやワシントンやナイチンゲールといった偉人伝も勉強します。中学以上になると、教科書でモーパッサンやトルストイなどが論じられていました。

意外なことに、日米開戦直前まではアメリカ旅行記も掲載されています。しかも、アメリカ文化を肯定的に評価する内容で。

こんな教材で相手国について学んでいながら、太平洋戦争突入と共に「鬼畜米英」とか叫びだしたワケですか。

まあ、戦前・戦中の日本人もアメリカの大衆文化が大好きでしたからね。対米戦下で敵性語が自粛される中、多くの人が「禁断症状」に苦しんでいました。軍人も同じで、精鋭の陸軍空挺部隊ですら余暇の時間にハリウッド映画を上映していたり、米艦隊へ突入する特攻隊員も「アメリカと 戦ふ奴が ジャズを聴き」なんて川柳を遺しています。

インテリ御用達だったロシア文学だのヨーロッパ文化だのとは、ちょっと違った感覚だったのでしょう。

 

どのようなイヌの教材があったのか、今回は分野別に取り上げてみましょう。

 

【自然科学教育と犬】

 

小學校教科書用書新讀本「小鳥と蜂」より 明治20年

 

教授の方法は既に前巻に記載するが如く、其分界等を懇に説示し、何獣は何の類にして、何部なるや等を記憶せしめ、而して後其性質効用等に及ぶべし。

動物とは、生命を保存して常に自由の運動を為すべき諸機関を具有する物の總称にして、其類凡そ三十萬に下らずと云ふ。而して之を論ずる學を称して動物学と謂ふなり。

動物を大別して、有脊動物、無脊動物の二網とす。更に又有脊動物を分ちて四網とす。

哺乳類、鳥類、爬蟲類、魚類なり。無脊動物を分ちて、三網とす。多節類、柔軟類、多肢類なり。又其各網を分ちて目とし、目を細別して族となす。

猶植物に於きて、目を分ちて科とするが如し。

哺乳類は有脊動物の最も高階に位する者にして、皆形體を具へて児を生ず。故に胎生と謂ふ。温血にして、其児に哺乳す。因りて哺乳類と名く。其中人類を第一等とし、之を分ちて十二目となす。

長瀬寛二「教授法及動物略説」より 明治16年

 

「小學博物教授法 動物之部」より 明治16年

「狗は世界中處として産せざる地なし。土地の寒暖に依て、種類異なり、家畜中最も能く人いに馴れ、且信義愛情の深きこと、諸獣に卓越す。夜中門戸を守らしめ、又猟の用に供す。大に人に益あるものなり」などとイヌを褒めちぎっている素晴らしい本でありますが、残念ながら文部省検定の教科書ではなく、検定外の副読本か何かと思われます。

 

この本には豺(ヤマイヌ)も掲載されていますが、当時の日本には、まだニホンオオカミとエゾオオカミが棲息していたんですよね。

 

オオカミについては、明治21年の「高等小學讀本巻之二」でも解説されています。

これが日本産狼の生態記録なのか、外国の話なのかは不明(ゾウやトラの話と一緒に紹介されていますので)。

 

猫の解説はこんな感じ。明治16年

 

高等小學讀本よりネコの解説。

 

自然科学の教育も、明治時代から重視されてきました。さまざまな動植物、さらにはケンクリコ(カンガルー)のほか、カモノハシやセンザンコウ、アリクイやハリモグラのような珍獣も紹介されています。

ちなみに、明治10年代の「両生類(遊水類)」はイルカやオットセイといった海獣を指していました。

本来の両生類はどうだったのかというと、カエル、サンショウウオ、イモリは蝦蟆類(カヘルルヰ)で纏められています。時を経ずして教科書でも爬虫類と両生類が区別されるようになりました。

 

「ジラフ」が日本で「キリン」と呼ばれるようになったのは明治40年からですが、明治16年の教材では既にキリンと称されています。何だコレ?とか思ったら、江戸時代から麒麟呼ばわりされていたんだそうで。

 

……さすが教科書、勉強になるなあ。

 

【道徳教育と犬】


 

礼儀やマナー、思いやりや動物愛護を楽しく学べるよう活用されたのが、寓話(童話)です。

「アリとキリギリス」「狼と狐」「犬と肉」「ウソをつく子供(オオカミ少年)」といった動物を主人公にしたイソップ物語が教材化されていました。

イソップの寓話が日本に伝わったのは関ヶ原合戦より7年も前のこと。児童用の題材としても、 明治6年から現代に至るまで活用され続けています。 我が国でも古典なんですねえ。

 

特に「慾深き犬」の話は人気があったらしく、複数回掲載されました。

 

帝國ノ犬達-イソップ

とらト呼ベル犬アリ。
慾深クシテ。常ニ食物ヲムサボリ食フ。
アルトキ。肉屋ニテ一ト切ノ肉ヲヒロヒケレバ。急ギテニゲ去リタリ。
ミチニ小川アリ。
橋ヲ渡リテユカントセシニ 橋ノ下ニモマタ犬アリ。
肉ヲクハヘテオナジク走レリ。
とらハ此ノ犬ヲ見ルニ 己ヨリ大イナル肉ヲクハヘタレバ 忽慾心ヲオコシ。其ノ肉ヲモムサバラントシテ。カミツキタリ。
シカルニ。橋ノ下ノ犬ハ。己ノ影ニテアリケレバ カヘリテ。己ノ肉ヲ水ノ底ニシヅメタリ。

小學教科書用新讀本 「慾深き犬」より 明治19年

 

狼

尋常小學修身書巻一 十九「ウソ ヲ イフナ」より、 明治42年 。 オオカミ少年の他に、「狼と狐」も教材化されています。

 

犬

よい子は助けてもらえるのだ。

尋常小学修身書巻一 二十一「キンジヨ ノ ヒト」より 明治42年

 

【情操教育と犬】

 

庭のすみで、先程からちやらちやらとすゞの音が聞える。
しやうじを明けて見ると、小さな犬ころが二匹、上になり下になりしてじやれてゐる。
あまりかはいら しいので、僕はしばらくそれを見てゐた。
すると其のうちに、僕の見てゐるのに気がついたと見えて、じやれ合ふのを止めて、尾をふりながら、ちよこちよこや つて来た。
僕が庭へ下りて、かはるがわる頭をなでてやると、喜んで僕の手にとびついてぺろぺろとなめる。
僕がえんがはへ机を持出して、おさらひをはじめると、二匹ともくつぬぎに手をついて、ぎやうぎよく僕のすることを見てゐる。
ふと、垣根の外でちやらちやらとすゞの音が聞えた。
二匹はいちもくさんにかけて行つたが、間もなくかはいらしいのを一匹つれて来た。
仲間がふえたので、又一しきりじやれ合ひをはじめた。
尋常小学国語読本八より

 

教訓話だけではなく、動物愛護精神を育む教育は、明治時代から始まっていました。

 

犬

小學修身書初等科之部より、明治16年

 

小學校新讀本参「なさけ」より、雀の雛を救う玉次郎少年。 明治20年

 

尋常小學讀本より、子猫を拾ったお時さんとお竹さん。 明治20年
 

犬

動物愛護教育に関しては、身近な生物を題材にすることが多かったようです。

もちろん、海外の動物愛護も教材化されていました。

 

 

ナイチンゲールはイギリスの大地主のむすめで、小さい時からなさけ深い人でございました。

父が使つてゐた羊かひに一人の老人があつて、犬を一匹かつてゐました。

或時その犬が足をいためて苦しんでゐました。その時ナイチンゲールは、年とつた僧と一しよに通りあはせて、それを見つけ、大そうかはいさうに思ひました。

そこで僧にたづねた上、湯できず口を洗ひ、ほうたいをしてやりました。あくる日もまた行つて、手あてをしてやりました。

それから二、三日たつて、ナイチンゲールは羊かひのところへ行きました。犬はきずがなほつたと見えて、羊の番をしてゐましたが、ナイチンゲールを見ると、うれしさうに尾をふりました。

羊かひは、「もしこの犬が物をいへたら、さぞ厚くお禮をいふでありませう」といひました。

尋常小学修身書巻四 第二十 「生き物をあはれめ」より 昭和2年

 

なお、第二十一「博愛」は、クリミヤ戦争におけるナイチンゲールの看護活動のお話となっています。

 

動物愛護団体も教育現場へ働きかけており、日本人道會は児童や警官(戦前は畜犬取締を管轄していました)に対する動物愛護授業を展開しています。動物愛護會も、明治39年から下部組織である「少年動物愛護會」を結成。各地の小学校で児童会を開催し、動物愛護教育に取り組みました。

これらの活動に、学校側も進んで協力したのでしょう。

 

少年動物愛護會の会則より
 

【算数と犬】

 

尋常小學校算術は、兒童の数理思想を開發し、日常生活を数理的に正しくするやうに指導することに主意を置いて編纂してある。

尋常小學算術に掲げた教材は、数・量・形に関する事項の基礎的なもので、日常生活によく現れ、しかも、兒童の心理・技能に適應するものを選び、これを大體数理の系統に従つて配列し、尚、兒童の心意の發達に應ずるやうに按配した。さうして、専ら學習に興味をもたしめ、進んで心身を働かしめ、最も自然に、且確實にこれを修得せしめんことを期してゐる。

しかし、生活は地方によつてその情況を異にしてゐる。これ等の事情に鑑み、教師は、本教科書の教材について、適宜取捨し、補充し、場合によつては配列を適當に変更して、一層兒童の實際に適應するものたらしめるやうに努めねばならない。

「尋常小學算術第一學年教師用」より 昭和10年

 

私は数字を見るとじんましんが出る体質なのでごじゃるが、小学校の算数は楽しかったなあ。

低学年の場合、「学習に興味を持たしめ」るために様々な工夫がこらされていました。

 

「尋常小學算術第一學年 兒童用」より 昭和10年

 

上の教材について、教師側の指導要領は下記のとおり。

 

「兒童用書第七頁では、犬と鶏とを数へさせる。単位の名は「匹」と「羽」である。

唱へ方は次の通りである。

イッピキ ニヒキ サンビキ シヒキ ゴヒキ ロッピキ シチヒキ ハチヒキ クヒキ ジッピキ

イチハ ニハ サンバ シハ ゴハ ロクハ シチハ ハチハ クハ ジッパ

兒童用書の下方は、小犬とひよこが綱引をしてゐる所を漫畫風に畫いたもので、数へ方の練習をさせるためのものである。

實際のものについて数へさせることは必要である。犬の他に、兎・猫・牛・馬等、鶏の他に雀・烏、鳩等、兒童の熟知してゐるもので、學校の付近に容易に求められるものを選ぶがよい。

しかし、これ等の動物の集合してゐる場合を捉へることは容易でなく、又捉へたとしても、数範囲が適當でなかつたり、對象が動いたりするために、数へることが困難難場合も少なくないから、取扱には注意を要する」

「尋常小學算術第一學年 教師用」より、指導要領・名数の数へ方 昭和10年

 

【唱歌と犬】

 

唱歌はたいせつな學科ですから、みなさんはよく勉強しなければなりません。

皆さん大きくなって、りつぱなえらい人になるのには、小さいとき學校で、おしへて下さることは、なにでもよく出來なければなりません。

唱歌なんかどうでもよい、唱歌なんか出來なくてもよいなどと、おもつてゐらつしやるかたがあるとするならば、それはたいへんなまちがいです。

學校で皆さんに唱歌を教へるのは、みなさんの心を美しくするためです。心の美くしい人は、りっぱなおこなひをする、美しい人になります。

そのほかに、ことばを美しくして、ことばをはつきりさすのも唱歌のちからです。

皆さんが大きくなつて、がくしやになり、せいじかになり、またぐんじんになつても、大きなおしようばいをするのにも、ことばをはつきりいつたり、たくさんの人の前で大きなこえでお話をするのにも、このこえをよくすることや、ことばをはつきりしてゐるのはたいせつなことです。

それで小さいときから、こうしたおけいこをしておかねければなりません。

なほその上みみのきくおけいこをするから、みみがよくなります。

 

「小學唱歌尋常科第一學年用」より 昭和3年

 

小学校の唱歌にも、犬をテーマにしたものがありました。それらも取り上げてみましょう。

まずは初期のものから。

 

第一学年用第十九「犬」  明治44年
1.外へ出る時とんで來て 追つても追つても附いて來る
ぽちはほんとにかはいいな
2.内へ帰ると尾を振つて 袂に縋つて嬉しがる
ぽちはほんとにかはいいな

 

第二学年用第十七「雪」 明治44年

「いーぬは喜び庭駆けまはり、ねーこは火燵で丸くなる~」という有名な歌。

これは、放し飼いが当たり前だった時代に見られた風景でした。しかし、自治体の畜犬取締規則が厳しくなるにつれて消えていったそうです。

 

雪が好きだといふと、他人はよく狗兒のやうだといつた。
だが今日では雪の降る日に街路で雪まみれになつて戯れる狗兒を見ることは稀になつた。應挙だの蘆雪だのの描いた雪中の狗兒。
私の少年時代には、それは街頭嘱目の小景であつたのだけれど、飼主の無い犬の生存は許されない今日では、市路傍は犬の子のうちむるる様などは有り得ないこととなつた。

鏑木清方「雪といぬころ」より 昭和10年

 

家畜である犬は、人間のルールにあわせて生活を変えてゆくのでしょう。我が家のフクも、真夏と真冬はエアコンが効いた部屋から頑として出ようとしませんし。何百年か後の飼犬は、換毛すらしなくなるんじゃないですかね。

 

「ポチトタマ」 昭和10年

1.このこは ぽちと まうします

ちんちんおあづけ みなじやうず

いまにおほきくなつたなら ごもんの ばんを よくしませう

2.このこは たまと まうします

まいにちげんきに あそびます

いまにおほきくなつたなら ねづみのばん をよくしませう

 

犬が登場する唱歌といえば、桃太郎もそうですね。

 

幼年唱歌「桃太郎」

僕が知っている桃さんと違うぞ。

唱歌じゃなくて軍歌みたいになってる……。

 

♪ひとつ私にくださいな。の唱歌もこの時代からありました。

 

「犬の芝居」

♪チャッポンチャッポンチャッポンポン テテンガチリチリ チャッポンポン

コイヌガ ヒヨコ ヒコヨ タツテデタ ヒゾメノ テヌグイ ホホカムリ 

という唱歌もあるのですが、歌詞からは状況がよく理解できません。

 

国民学校の時代になると、初等科國語掲載「軍犬利根」を元にした唱歌も現れました(因みに軍用犬行進歌は「軍歌」です)。

 

国民学校芸能科音楽初等科音楽一年「軍犬利根」
1.行けとの命令まつしぐら
かわいい軍犬まつしぐら
カタカタ カタカタ カタカタ ダンダンダン

弾の中

 

2.あの犬うてうて うちまくれ
のがすなのがすな うちまくれ
カタカタ カタカタ カタカタ ダンダンダン

敵の弾

 

3.よし來いよし來い 利根來い來い
わたしだわたしだ 利根來い來い
カタカタ カタカタ カタカタ
ダンダンダン 弾の中

 

これは伝令犬(通信文書を運ぶ軍犬)の活躍を歌にしたものですが、実際の戦場では犠牲が続出する危険な任務でした。
 

【習字と図画】
 

ミミズがのたくったような字しか書けない悪筆の私は、習字の授業が大の苦手でした。

いまでも墨汁の匂いを嗅ぐとじんましんが(以下略)

 

尋常小學國語讀本巻一より 大正6年

 

習字の題材に犬を用いる先生もいました。

教師本人が愛犬家だった場合、趣味全開の作品群が教室を飾ることとなります。

 

「生活の友、愛犬の手入れも愚妻一任の始末、研究も又出來ない余だ。
研究欄に目見えるにはあまりに心臓も弱過ぎる。これも先輩各位に御願ひする事にする。
然しこれでは浮世の義理も立つまい。S犬の名さへ知らぬ余を導いてくれたものは會員諸兄の他にはない。
出來る骨折りはし度い自分だ。とうとう子供になきついた。
「先生を助けろ」
「萬事OK」
余に代つて御目見えしてくれたのが愛しの教へ子だ。別掲作品を御披露する。
吾が會のスローガン、巻頭の明朝体で綴られた吾等のモツトーだ。
腰の刀は伊達ぢやない。今一度、今一度反省顧慮する必要も有るんぢやなからうか。
今や本校児童は「軍用犬」「シエパード犬」で持ち切りだ。「あの犬色々覚えてるよ」「強くて負けないわね」と。
然し「体裁良いね」とは言わない。純真な兒童、心理学者の所謂「単純な心理」も穿つたこと言ふものではあると、感心させられる。
こんな子供の正直な告白として再認識し度い。敢て學童を引張り出した所以である。
幸に御笑覧を得ば吾等の幸甚此の上もない」

日根野高等小学校教師 竹内勣「南泉版」昭和12年

 

「万事OK」って言葉、この時代からあったんですね。

 

武内先生が生徒に書かせた習字。 

 

国民学校時代の習字には、このような題材も。

「初等科習字」より 昭和17年

 

尋常小學國語讀本巻一より 大正6年

 

因みに、オハナは尋常小学2年の教科書にも出演しています。

 

尋常小學國語讀本巻二「カゲエ」より 大正15年

影絵の教材ってコレ位ですかね?

 

犬の描き方とクレヨンでの彩色教材。戦争後期は愛玩犬ではなく軍用犬がモデルとなります。

国民学校の初等科図畫「軍犬」より

 

初等科図畫より「ポスター」。テーマはカラダヲキタヘヨ(体を鍛えよ)。

昭和17年

 

身近な存在である犬は、絵画やマンガ、彫刻などの題材としてもうってつけであり、実際よく描かれています。

しかし戦争が激しくなるにつれ、この分野も軍事色が強くなりました。

子供たちの人気者だったのらくろも、紙資源のムダであるとして内務省の役人から連載を中断させられてしまいます。

 

 

【軍国教育】

 

もともとは自然科学や情操教育の教材であった筈のイヌ。しかし、戦時下へ移行すると共に、ハチ公物語や軍犬武勇伝が皇民化教育や軍国教育として利用されるようになります。

 

さて、桃太郎は軍国教育の部類に入るのでしょうか?

 

小学校で開催された軍用犬実演の写生画。

 

さて。

忠犬ハチ公物語は「軍国教育」の範疇なのか?それ以外の「皇民化教育」なのか?単なる「情操教育」ではないのか?

そもそも軍国教育の基準とは何ぞ?

そのへんアヤフヤなまま戦時教育を批評する向きに、「基準」を提示するには?

というお話は次回取り上げましょう。長くなるので。

 

 

(次回、忠犬ハチ公物語に続く)

 


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