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Channel: 帝國ノ犬達
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鹿児島から来たコリー(愛玩犬)

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生年月日 昭和11年

犬種 ラフコリー

性別 

地域 鹿児島縣

飼主 神ノ川氏

 

前回取り上げた、鹿児島鴨池動物園でコリーが飼われていたというお話。

https://ameblo.jp/wa500/entry-12319067640.html

南国鹿児島と暑さが苦手なコリーの組み合わせは奇妙に見えますが、事実として鹿児島産コリーの記録はチラホラと見かけます。

 

 

十月中旬鹿兒島の神ノ川氏から突然手紙が來て、貴會展覧會に犬迄出陳したいと言つて來た。歓迎するところであると返事を出したが、其の次に來た手紙を見ると何處か犬を預かる所を世話してくれと云つて來た。「仔犬連れて行く處分したい、希望者の御世話を乞ふ」と來た。

希望者もあるので犬を見なければ何とも言へないが、希望者もありそうだと言つてやると、今度は「六頭連れて行く、皆處分したい」といふ事で、六頭も留めてくれる犬舎はなくても會の爲だし愛犬家同志の事だから犬舎を探す事にした。

 

下井草に知つて居る訓練所があるから其處へ預かつて貰おうかと思つて尋ねて行つて見ると、犬舎はシエパードで満員だ。「両日中に二室空く」といふ事だが、此の方は六頭でお話にならない。先日新宿の會合で山中さんが若しも留める處が無かつたなら私の犬舎へ留めてあげると親切に言はれたのを思ひ出して、山中さんへおすがりする事にした。

 

鹿兒島からは「トウキヨウエキ、オリテヨイカ」といふ電報が來た。山中さんに御無心して御承諾を得、返電する。

犬の着く時間を見計らつて関根さんと二人で横濱驛で犬を迎へようと馳せつける。

犬は六頭、元氣に着いた。神ノ川氏は小さな鞄一個と引紐を持つて出て來られた。仔犬六頭をタクシーに詰めて、戸塚まで夜の道を走つてのは餘り楽では無かつた。是もコリーなればこそ、協會なればこそと思つた。

 

連れて來た犬は前記の如く皆子安系だが、少々小柄の方だつた。鹿兒島から犬の展覧會へ出陳するといふのは、是を以て嚆矢とするとでも言ひ度い處だ。

會場では一頭希望者に連れられて行つた。残りの五頭もボツ〃片付いて行つた。そして神ノ川氏は鹿兒島へ帰つた。此の間約二週間、御多忙中にも拘らず、其の仔犬達と飼主の御世話をされた山中さん一家の人達に感謝しても感謝しきれ無い程である。

茲に貴重なる紙面を借りて謝意を表する次第である。

 

展覧會を顧みると、色々不備な點が多かつたと思ふ。來観者にお茶一つ上げる事も出來なかつた。メガホンが欲しかつた。いくら内輪の會でも矢張りもう少し儀式張つた處があつてもよかつた様にも思ふ。

餘り鯱固張つて居るのも厭なものだが。

 

賞牌をトライスラー嬢が犬の頸につけてやる處は他の會でも見られぬ美しい情景であつた。こんな所をシネマにでも撮つて置きたかつた。賞牌といへば何の會でも入賞の犬には賞牌は入賞者に渡すが、入賞したといふ一札をあげるのが本當では無いだらうか。何かメダルばかりで無く、文字で書いたものも貰ひたい様な氣がする。

 

當日はトライスラー嬢の母堂が病氣のため入院されたといふ事で、何かとお忙しい中を割いて我々のためにお世話下さつた事は誠に感謝に堪えない。暑く御禮を申上げる次第で、同時に斡旋の労を取られた金子委員のお骨折も多としなければならない。

次回の展覧會も此處でやれるか何うか(※聖路加病院の故ルドルフ・トライスラー院長邸で開催されました)。貸して下さるか何うかも問題であるけれども、出陳頭數が此の以上多くなると混雑して双方共に困る様になるかも知れぬ。

 

日本コリー犬協會「展覧會餘録」より 昭和11年

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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