警戒犬用法例
一、駐軍間に在りて晝夜を問はず歩哨の補助として極めて有効なりき。軍犬に對しては一般土民は極度に恐怖しありて、附近に近寄らざる状態なり。
ニ、日本軍宿舎の周囲、或は其部落内特定の區域に移動警戒せしめ、警戒を至厳ならしめ得たると共に、歩哨の精神上に及ぼしたる効果大なるものあり。
三、行軍間、特に夜行軍に於ては斥候等の前方に軍犬を進め、斥候の不安を除き行動を容易ならしめたること屡々あり。
警戒連絡行動
警戒は鐵道守備を主とする線路巡邏及夜間衛兵潜伏斥候等に連行し、始終兵の前方を行進し、其特殊性能に因り事故の發見及防止に兵の直接補助を奏しある外、常に二粁内外の部隊間連絡行動に使役しあり。
討匪行動
各討匪行動に際し適宜討匪部隊に配属せしめ、常に斥候兵と同一行動に使役せしめ、實務上及精神上多大の効果を収めたり。
(昭和12年7月)
其他
一、逮捕せる潜伏匪又は通匪、嫌疑者等の調査訊問に當り、各種の拷問をなすも容易に白状せざりしも軍犬を以て威嚇し、又は襲撃をなすときは極度に恐怖して事實を白状し、爲に連累者の逮捕或は有利なる匪情を得たること多し。
一、軍犬を使用し成績顕著なりし實例
昭和十年度秋季討伐中、福祥匪を索めて討伐し、併せて岫厳縣第三區粛正工作實施中の早田部隊は十月八日要應溝に於て潜伏中の任福祥部下一名を逮捕し調査訊問に當り、数時間を要し諸種の拷問を用ふるも白状せざりしが、偶々連行せる軍犬瓦房號をして襲撃せしめたる所、極度に恐怖し遂に一切を白状するに至れり。之が爲有力なる通匪並潜伏匪九名を一網打尽に逮捕し、任福祥匪の行動を知り得たると共に、別に思想匪鉄血軍に関し有力なる情報を得、之を補足撃破せしむるの素因をなせり。
爾後数回に亘り逮捕匪の訊問に利用し、短時間に有利なる情報を得、討伐行動を適切容易ならしむるを得たり。
傳令
なし