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Channel: 帝國ノ犬達
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猟犬としての日本犬 大正4年

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猟機は熟して、鳥軍は堂々陣を張つて、各山野に展開して居る。各狩猟家は、好敵手を目前に控へて、猟犬の撰擇に務めて居る有様である。

さて其猟犬です。

外國種は、元より優秀なる技能を、有しては居るであらう。然し吾が國の風土気候が、外國と異なつて居るのみか、管理及び飼養の関係も、又趣きが異なつて居るので、自然身體に強弱を來たすこともあらうかと思はれる。

特に猪や鹿狩の如きは、深山に於て行るもので、積雪の間を馳駆することが多い。斯る猟場になると、外國種は少しく、活動上不充分の感がありはせないかと思ふことがある。

 

然るに在來の日本種は、犬までが大和魂を有して居るので、頗る勇敢な性を備へて居る。此の犬を撰扶して注意を拂ひ、調教訓練を加へたらば、鳥獣向きの猟犬となるは勿論、猛獣向きの猟犬としても、最も適當ならんと思ふ。

日本種の犬は、其性質が、稍々獰猛な傾きはあるが、其代り體躯強健にして、氣候風土に慣れて居るので、風土病などに侵さるゝことは至つて尠い。夫れのみならず、粗食にも耐へるので、管理飼養上飼主に取つては、容易である。

 

多くの猟家の間には、日本種を調教し、鳥獣の猟犬に使用して居る人もある。彼の猟界の一人として知られたる、此の世を去つた渡邊老人は、壮年の頃より狩猟好きで、餘暇さへあれば、猟犬を伴ふて、山野を跋渉したものであつたそうな。

殊に猟衣なども、黒いものは、鳥の目標となるので、薄茶色の猟衣を用ひて居た。

四十年前の四昔しから、當時の様な、服装で出動したとは、猟界に向つて見識のあつたことが想像される。

 

此の老人が、好侶伴として、伴ふて居た猟犬は、日本犬であつたが、猟場に行けば、敏捷な働きをなし、又猟に行かない時は、夜間警戒の番人代りをも勤め、老人に對して頗る忠勤を励げんだとのことである。

之れは四十年も前のことで、調教なども、不十分の時であつても、此の通りの良犬であつた。

近來進んだ、調教法で、訓練したらば、日本種も、其特性を發揮して、純良なる猟犬となるのは、決して疑ふべからざることである。何にも彼も、西洋〃と云はないで、日本種調教を鼓吹するのが當然ではあるまいか。

 

青木儀一郎『日本犬も調教せば立派な猟犬となる』より

 

「日本犬は大和魂を持つ」とかいう主張は、和犬が消えかけていた大正時代からあったんですねえ。

風景に溶け込むため、服装だけではなく赤犬もハンターから重宝されていました。


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