犬も猫も人間社會に有用な動物でありますが、わたしは犬の方が、人間社會に有用であると思ひます。
猫も鼠をとりますが、私の飼ってある鳥を時々捕つて食べてしまひます。
考て御覧なさい。
犬は猫に較べて、知識も大層好く発達して居ります。又昔から犬が主人を助けた話は、たくさん聞いて居ります。
又犬は人に馴れるにつれて、種々の芸もします。盗賊除にも、銃猟の役にもなります。
わたしが久しく家を出て帰省する時などは、まだ忘れないで、なつかしげに、尾をふつてわたしを迎へてくれるのです。
それですから、世人も犬を可愛いがるのでせう。犬が有用でせう。
茨城縣
平岡みち 十一歳三箇月
自作證明者 兄・平岡孝男
評
嬢ちやま方からこうして可愛がられる犬は仕合せものです。
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明治43年の「犬と猫とは何れが有用か」より、第十二ラウンド。
やっぱり小学生の作文はいいですねえ。もう少し成長したあたりから背伸びして小難しいことを書きたくなって、人生の黒歴史に銘記される作品を生み出したりする訳です。
そういえば犬と猫の記憶力ってどんなモンなんですかね?
犬に関しては平岡さんが書いてあるとおり。
何年振りかで遠方から兄妹一家が帰省してきても、ウチの犬達はちゃんと識別できています。
群れ(家族)が一挙に10人近く増えた処で、彼等の匂いが変っていなければ大丈夫なのでしょう。
久しく会わないでいると、子供の成長の早さに驚かされます。更に姪っ子たちは英語喋ってるし、甥っ子は博多弁を喋っているしで、見た目とコトバ頼りのニンゲンの方が難儀しております。
猫も、「久しく家を出て帰省する」家族を覚えているのかな?
第十四ラウンドへ続きます。
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明治犬猫論争☆第十三ラウンド
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