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Channel: 帝國ノ犬達
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クロチルデとペジーガー親仔(愛玩犬)

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生年月日 不明 
犬種 シェパード
性別 牝
地域 大阪府
飼主 鈴木正男氏

 

日本シェパード犬研究会(NSK)登録犬。

クロチルデの仔としては、他にエディもいました。

https://ameblo.jp/wa500/entry-11489095354.html

 

 
帝國ノ犬達-クロチルデ
昭和8年、NSK訓練所にて
 
同人の相馬氏は大阪の同人鈴木正男氏の愛犬クロチルデの仔犬で生後五ヶ月ばかりのものを飼育して居る。是が氏の手に入る様に成つたのには次の様なエピソードがある。
 
二、三ケ月前、中島黒狼荘主人が西下された時、鈴木氏が自慢の仔犬を見て貰ふと思つて色々水向けをするが黒狼荘主人中々十三迄出向ふとは云はない。そこで鈴木氏が其の仔の中で一番良いのを東京の南謙吉氏の所へ差上げる爲めに瀬野氏に選んで頂いてあると云ふと、黒狼荘主人は自己の選擇眼と瀬野氏の夫れと同一であるか、否かを確かめる爲め、又若し違つた犬を選んだ場合、何れが将來良くなるかに興味を覚へて急に見に行く事に成つた。
成る程、南氏の爲めに選んであつた犬は素晴らしい體型をして居たが、黒狼荘主人には他の兄弟仔犬と全く別行動を執つて居る痩せた小型の一匹がピンと來た。
黒狼荘主人「僕なら此奴を選ぶね。相馬君に持たせ度い犬だ。きつと喜ぶぜ」
鈴木氏「相馬さん、家の犬が欲しいて云ふていやはりましたか」
黒狼荘主人「クロチルデの仔を訓練して見たいが、何分にも関西の相場ぢや中々東京の者には手が出ないし、假にカネの問題は別としても、選ばせて貰えるのでなくちや幾ら名犬の仔でもね―。と云ふて居ましたよ」
鈴木氏例の調子で一寸首を傾けて考へて居たが、突然
鈴木氏「相馬さんがクロチルデの仔を訓練し度いて云ははんなら、よろしおます上まつさ。只で此奴を上げまつさ」
黒狼荘主人「只と云ふわけにも行くまいが……。さうだ相馬君の所では十三頭も生れてもて餘して居るんだ。よし、三匹と交換し様」
鈴木氏「いや只で上げまつさ」
黒狼荘主人「いや三匹と交換だ」と互に譲らず。
黒狼荘主人が帰京して早速相馬氏に此の趣を話すと、氏は中島氏にピンと來た犬なら貰ひませう。交換なら、只と三匹の中間の二頭にしませうと、直ちに「イサイナカシマシヨリキイタ コチラカラコイヌ ニヒキオクル」と打電して話が決まつたので、最近相馬氏の家を尋ねると氏は此の仔犬の頭を撫で乍ら言ふ。
「中島さんはね、此奴の訓練されるのを手具脛引いて待つて居るのですよ。出來上つた所で、『此奴は僕が選んだのだからねえ』と云つえt僕の頭を抑へ様と言ふ腹はんですよ。」
仔犬の名前はBesieger。之をBe siegerと分割すると「ジーガーに成れ!」と云ふ意味に成る。……はてさて自信のお强いことよ(曽根慶二郎 昭和8年)
 
関東シェパード界と関西シェパード界の交流というか意地の張り合いというか、当時の東西犬界事情を窺い知れる記録です。
東京へ移ったペジーガーですが、その直後にジステンパーで病死してしまいました。
 
それから後は日頃御自慢の名犬が続々あたりを拂ふつたと云つた風に集つて來る。正午頃にはもう揃つてゐる。と、自動車の音。
オヤツと驚くうちに相馬氏が自作の愛犬の等身大の彫刻を大切にかゝえて
「僕はテンパーで愛犬全部を失つた。そのかたみに作つた。これがペヂーガーの全身像です。連れて來る犬を持たない僕はこれをつれて來た」
あの强度の近眼鏡の奥に熱い涙が湧いて見える。ペヂーガーは同人鈴木正男氏のクロチルデと齋藤忠一氏のヘルドの仲に出来た将來を望まれた仔犬であつたに……。長い旅路をかけて大阪から望月豊作氏、鈴木正男氏、根本精一氏のおいで下さつた事は殊に本日の観賞會に一段のにぎやかさを添えた。
NSK『光栄に輝く十月四日』より、昭和8年

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