大正九年四月四日 荒川沿岸川口町付近に開催の第二回竹中競猟會
四月四日
土崎愛犬協會主催の全國闘犬大會を開催（秋田土崎常設場）。關西方面からも多數出場の筈。
『春の犬界の催し』より 昭和12年
四月四日
やゝ寒けれどやうやくにして雨上りたれば、アスを伴ひて山に行く。途中ふと想ひつきて歩行に留意す。別荘と實家との傳令を目標にアスに進路に對する確固性を與へんとすればなり。完成するやせざるや前途遼遠にして東亜永遠の和平に臨むが如し。
然れ共、吾一度思ひ至るればたとへその歩み遅々たりとも何時の日にか決せん遥かなる峻路を辿らん思ひにてその初歩を印せんとす。
帰途Hの犬に逢ふ。
アス、物を咥へたれば服従作業中なる観念を持てるにや、先日の如き攻勢に出ず。吾そのハンドラーなる自転車上の主人に會釈せんとせしに、彼冷たき白眼にてアスを一瞥せしのみにて急ぎ行きぬ。常日頃よく途上に逢ひて互ひに挨拶し合ひたりしを、一日アスが彼の大きなる愛犬（牡）に噛みつきし時、彼の犬主人の聲符も聞かで一散に逃げ失せし事あり。吾はその時直ちにアスを叱りて家に入れしに、彼は愛犬の紐を解きてアスにけしかけたり。かゝる態度は犬の飼育者として實に不快なりき。
何となれば、S犬は闘犬にあらざればなり。
當方より求めずとも向ふよりも攻勢に出でし時は護身の爲に應戰するは當然の事なるも、それも直ちに主人同士は双方から止むるが至當と思はるゝに、彼の態度は明らかにS犬マン道徳を無視せるなりと思ひ、それ以後は彼の人格を軽視するに至たれども、行きずりの挨拶位はと年下の亦見知り越しの礼を保たんとせるに、彼は之を肯んぜぬなり。
哀れなる人かなと思ひぬ。
幸ひにしてJSV同人ならざる事をひそかなる喜びとす。
夜、主人の居る中支兵站部○○爆撃のニユースありて心臓寒きを覚ゆ。
壽田和子『饒舌録』より 昭和15年
昭和15年4月4日診察