
社會奉仕に功労ある人間が表彰されてゐるのに、人命救助、犯罪捜査、犯人逮捕等、社會の爲めに立派な貢献をしても、犬であるが故に表彰されないのは遺憾であるとして、東京朝日新聞「朝日こどもの會」では、過去一年間に現はれた忠犬を表彰する爲め、去る七月十一日午後一時半から丸ノ内同社講堂で「お手柄犬の表彰式」を行ひました。
當日は両親兄姉に伴はれた坊ちやん、嬢ちやんによつて、會場は定刻前に、早くも満員の盛況。
先づ東朝計畫部長成澤玲川氏が表彰式を行うに至つた次第と、今回表彰された名犬十三頭の名を紹介して、愈よ銀賞牌付頸輪贈呈式に移り、新潟縣刈田吉太郎氏愛犬玉公、大阪府北村巡査愛犬ポリ、兵庫縣高橋氏愛犬つる、神戸市森内章介氏愛犬カールを除いた出席犬九頭に對して、特に愛犬家藤井浩祐氏作製にかゝる銀メタル付頸輪を贈ると共に、その功績を紹介しましたが、主人に曳かれたこれ等の名犬が登壇する毎に、可愛い観衆は一斉に拍手を送つて、涙ぐましい動物愛護の情景が展開されました。
次いで、藤沼警視總監の代理として、三島警務部長が祝辞を述べ、「只今この式の主旨を伺つて、警視廳としても是非出席してお祝ひ申上げねばならぬといふことを理解いたしました。現代の社會の最も大きな缺陥は何かといふと、徒らに権利の主張だけが強くて、犠牲的精神に缺けてゐることであります。斯ういふ世相に際して、犬が立派に警察賞に値する仕事をなしてゐるのに、現在までそれを表彰する機関がなく、私共としても遺憾に思つて居た次第です」と。
次に愛犬フミ子に代つて井上正夫氏が「答辞」を述べ、「斯うして表彰されるのは、何といふ嬉しいことでせう。今日私が犬を連れて近所を歩いてゐると、あ!あの犬だ。あれが今日、朝日講堂で表彰されるんだよ、と話し乍らすれ違つた人達がありましたが、これを聞いた時の私は、まるで私が誉められでもしたやうに、鼻が二寸も高くなつたやうな気がしました。
家来のお蔭で、家來と一緒に寫眞入りで世界に手柄が傳はるなどゝいふことは、本當に嬉しいことではありませんか。
人間の社會にはいろいろと醜いことがありますが、犬にはそれがありません。私はこの犬の尊い氣持が好きで、平素犬の氣持のやうになりたいと望んで居ます」と愛犬論を一席弁じて喝采を浴び、続いて愛犬フミ子ちやんとキヤツチボールの實演をやつて、坊ちやん嬢ちやん達を喜ばせました。
「お手柄犬の表彰が七月十一日朝日こども會で催された」より 昭和9年
當日は両親兄姉に伴はれた坊ちやん、嬢ちやんによつて、會場は定刻前に、早くも満員の盛況。
先づ東朝計畫部長成澤玲川氏が表彰式を行うに至つた次第と、今回表彰された名犬十三頭の名を紹介して、愈よ銀賞牌付頸輪贈呈式に移り、新潟縣刈田吉太郎氏愛犬玉公、大阪府北村巡査愛犬ポリ、兵庫縣高橋氏愛犬つる、神戸市森内章介氏愛犬カールを除いた出席犬九頭に對して、特に愛犬家藤井浩祐氏作製にかゝる銀メタル付頸輪を贈ると共に、その功績を紹介しましたが、主人に曳かれたこれ等の名犬が登壇する毎に、可愛い観衆は一斉に拍手を送つて、涙ぐましい動物愛護の情景が展開されました。
次いで、藤沼警視總監の代理として、三島警務部長が祝辞を述べ、「只今この式の主旨を伺つて、警視廳としても是非出席してお祝ひ申上げねばならぬといふことを理解いたしました。現代の社會の最も大きな缺陥は何かといふと、徒らに権利の主張だけが強くて、犠牲的精神に缺けてゐることであります。斯ういふ世相に際して、犬が立派に警察賞に値する仕事をなしてゐるのに、現在までそれを表彰する機関がなく、私共としても遺憾に思つて居た次第です」と。
次に愛犬フミ子に代つて井上正夫氏が「答辞」を述べ、「斯うして表彰されるのは、何といふ嬉しいことでせう。今日私が犬を連れて近所を歩いてゐると、あ!あの犬だ。あれが今日、朝日講堂で表彰されるんだよ、と話し乍らすれ違つた人達がありましたが、これを聞いた時の私は、まるで私が誉められでもしたやうに、鼻が二寸も高くなつたやうな気がしました。
家来のお蔭で、家來と一緒に寫眞入りで世界に手柄が傳はるなどゝいふことは、本當に嬉しいことではありませんか。
人間の社會にはいろいろと醜いことがありますが、犬にはそれがありません。私はこの犬の尊い氣持が好きで、平素犬の氣持のやうになりたいと望んで居ます」と愛犬論を一席弁じて喝采を浴び、続いて愛犬フミ子ちやんとキヤツチボールの實演をやつて、坊ちやん嬢ちやん達を喜ばせました。
「お手柄犬の表彰が七月十一日朝日こども會で催された」より 昭和9年
生後一年六ヶ月のハリー號は、第三回目の発情後、第十一日目及第十三日目(六月十一日、同十三日)に交配せしめた。
然して七月十一日、少し多いと思はれるくらいの帯下を出したのである。
早速某獣醫の診察を受ける事になつた。其の結果流産と言ふ芳しくない診断を下された爲めに、川村・甲斐一等兵はすつかり落胆してしまつた譯である。
毎夜丸々と肥つた仔犬の出産を夢に見てゐたのである。川村一等兵などは川村式仔犬食器と云ふ自案自作の仔犬食器を作つて待つてゐたのである。
台湾歩兵第一連隊軍犬班 鈴木中尉 昭和9年
七月十一日より十七日まで、東京畜産連盟主催の家畜を愛護し資源を殖やせをモツトーの家畜週間は、十一日新宿伊勢丹ホールに於ける講演会を皮切りに、十二日十六日清掃デー、最後の十七日には浅草観音堂に動物慰霊祭を催し、関係者初め一般者の礼拝に賑ひ、成功裡に週間を終つた。
昭和15年
昭和15年