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Channel: 帝國ノ犬達
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ハソ(猟犬)

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生年月日 不明

犬種 ポインター

性別 不明

地域 秋田縣

飼主 某愛犬家氏

 

十一年十月九日、市内の某愛犬家より呼ばれて往つた。ポインターの躯型大きな獵犬ハソ號が跛行するので、本荘の知人からの其の治療を託されたといふのである。診れば右肩の慢性跛で、上肩已に痩削してゐるので一年前からの陳舊跛であると思ふた。

かうなつては刺戟劑くらゐでは癒えないと診たから、大動物の肩跛行に對して施す食塩水の注射を應用すべく考へた。乃ち肩の前方(頸礎に近い境界部)に上方より下方まで數ケ處に向つて五%食塩水を二㏄づゝ皮下に注射すること隔日、三回に及んだ。

而して最後にメンター水を一回同様注射したるに望外の効果を得た。即ち跛行は注射を重ねる毎に輕減し、第四回目を注射してのち間もなく普通歩にては僅かに見ゆる程度になり、成るべく劇走を避けるやう注意して置いた。それから二週間ばかりにして試みに猟用したるに、甚しい劇動では初めのうち少しく跛を見せ疲労も速かであつたが全治するを得た。

犬に對し肩跛に食塩水の注射をしたのは予としては初めてゞあり、第三回の注射に加ふるにメンター水の注射をしたのも亦初めての試みであつて、心中、冒劍と思はないでもなかつた。

蓋しかくの如き慢性跛に對しては強き刺戟を與へる必要を認めたからである。それはテレピン油を馬に注射することのある點から考へ付いたのであつた。

 

熊谷金太郎「犬の慢性肩跛行」より 昭和11年


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