生年月日 昭和2年
犬種 イングリッシュポインター
性別 牝
地域 兵庫縣
飼主 土師参五郎氏
昭和二年十二月、日本電力會社を辭するに及んで、一番獵犬養成所でもやつて、副業の一つとしたい念願から、色々苦心してやつと手に入れたのが此パピーであつた。
正月も半ば過ぎた或る小春日和に、或る犬屋から連れて來て座敷の上で飼ひ始めた。
よく食ふやつで、いやしいのには閉口した。五月になつてアカラス症に罹り、岡山の僕の母校に入院三ヶ月間の治療を受け、僕等が須磨の家に引越してから歸つて來た。
昭和四年五月頃、預けた兵庫の家で盗まれて、西代の或る人に飼はれてゐた。大枚何百圓かの良犬だが、獵犬としての落第生―、最も、初發を不意にくらはしてプロの空ケースを犬の頭にぶつゝけたのが原因か―、然かも其の新しい飼主は相當の代金を出したといひ、可成り愛してくれる人らしいので、文句も云はずに進呈してしまつた。
『犬の素描 吾等の愛犬(昭和6年)』より