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Channel: 帝國ノ犬達
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4匹の日本犬大部隊

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誤譯でも誤植でもないが、いゝ加減な憶測から飛んだ誤報を傳へることは勿論まゝある。それを當事者の立場から書くことは洵に以て尻擽ゆい。
これは笑へぬナンセンスの一つだが、内地の某大新聞(新聞名は特に遠慮するとして)が、故多門將軍の斉々哈爾入城の光景を撮つた寫眞號外の説明に「哈徳門入城の光景」とに書いてゐた。これはあの城門の壁塀に煙草「哈徳門」の廣告が、例の青ペンキでデカ〃と書かれてゐたのを見て思ひ違ひしたものらしい。
知らぬ地名の誤譯や誤植に至つては、支那事變の擴大と共に果してどの位あるか見當もつかないが、そこはそれ「知らぬが佛」で、案外平氣の平左でやつつけてゐるのは穴勝ち強心臓の爲めのみではあるまい。
滿日紙上最近の失敗は―、といつても算へれば相當の數に上ること勿論で、これを一々紹介したのでは村田滿日社長が大連の木曜會の罰金「葡萄酒献上」の數を徒らに増すばかりでお氣の毒でもあり、筆者自身世間様に對して恥の上塗りを一層色濃くするばかりであるから、大抵の處で御免を蒙むるつもりだが……。
「日本犬の部隊を北支へ送る」といふ記事の標題が「日本大部隊」と誤植されてをり、これは大變と慌てゝ訂正すると、それがまた工場の挿違ひで「日本犬大部隊」となつてしまつた。
しかもその大部隊たるや「僅かに日本犬四匹」だつたのだから讀者も定めし呆れたことだらうが、編輯者自身は正に冷汗三斗だつた。
も一つ、賀川豊彦氏が印度から歸つて來て、神戸での談話記事中「ガンジーにはもう大して期待を持てぬ。それよりもボースに期待すべきものがある」とあつたのが、どう間違つたものかチヤンと「坊主に期待」となつてゐた。
ボースとは社會運動家のボース氏の事である。
これでは「多數不安(ファン)」の見送りがあつたり、「プラウダ氏(プラウダ紙)」が報道したり、忠勇なる我が兵士が「微笑(傷)だも」負はなかつたりする他紙や通信社の誤譯・誤植を笑ふ處ではない。

 

満洲日日新聞編輯部 淵村兵庫『新聞の誤譯・誤植(康徳6年)』より


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