その名の通り、スコットランド産テリアを源流とする愛玩犬。小動物の巣穴に入り込めるよう、小柄で短い四肢をしています。タフな性格であり、「ダイ・ハード」とも称されてきました。
古くから愛されていたスコッチテリアですが、品種として確立されたのは1800年代に品種のこと。以降、交配を重ねられつつ世界中へ拡散し、第一次大戦後あたりから人気犬種となっていきました。
詳しい来日時期は不明ですが、戦前にはスコッチ愛好家による「日本スコッチテリア倶楽部」が発足しております。
同倶楽部大阪事務所を支援していました、大阪畜犬商會トリマー鵜野福子さんによるスコッチ談をどーぞ。
戦前のスコッチテリア。既に国内蕃殖個体が流通していました。
昭和12年の広告より
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スコツチ・テリアは名前を聞いたゞけで、ほゝ笑ましくなる犬。
真黒な毛、真黒な瞳、真黒な鼻、せいの低い不細工な形、それてゐて上品な犬。
ユーモアな動作、表情に富んだ顔、利口な気質、小さいくせに落ちついた犬。
只無条件で好きな犬、スコツチ・テリア!!
およそあらゆる犬種を飼育した事のある私でありますが、とにかく無条件で好きな犬はスコツチ・テリアで御座います。無表情な様で愛嬌のある顔、甘える動作でも、他のテリア種にない、よい所のある犬。
心から本當に好きな犬で御座います。
それにとても身體が丈夫で、生れてさへ了へば本當に世話のない犬で御座います。
度々お産をさせました経験で、仔犬の育て方を書けとのことで御座いますが、まづお話の順序としてお産のことから申上げます。
少しでも皆様の御参考になりますれば、この上の喜びは御座いません。
交配時の心得
先づ交配時の事から御話致しませう。種牡の選定で御座いますが、只今は日本にもチヤンピオンが輸入されて居りますし、外にも外國から来ましたよい犬が多々ありますので、大変楽になりました。
自分の持つてをります犬の欠點をよく見極めまして、それを補ふ様な犬と交配させます事は、どの犬種も同じ事で御座います。
スコチチは成るべく丈の低い、骨の太い、耳の小さい、尾の真直ぐなもの、顔の大きい、首の太い、がつしりした犬を御選びになれば間違ひはありません。
それに日本では毛色を大変黒々とおつしやいますが、大體スコツチの原産はブリンドル(トラ毛)だそうで御座いますし、あちらでは犬さへよければ、毛色はあまりやかましく云はないそうで御座います。
話がそれた様で御座いますが、種牡がえらび出されましたら、牝が出血しはじめて十二三日頃が交配に一番よい時期の様に思はれます。
これはどの犬種も同じ事ですが、スコツチはせいの低いものだけに、交配が却々六づかしい様で御座います。牝によつて発情して居ますのに拘はらず、大変小さい局部の犬があります。さう云ふ犬は牝の背中へ牡をのせて、多勢がゝりで待つて居りませんと、離れて了ふ事が御座います。しかしそう云ふ事は外の犬種にもたまにありますが、スコツチは大変多いやうで御座います。
牝をお持ちのお方は大変たよりない様に思はれるかも知れませんが、しかし今までの経験上、決して心配な事は御座いません。
但し牝があまり太つて居りますと、不可能の時もありますから、牝をお持ちの方はふだんから運動をよくして、犬をしめて置く必要が御座います。
鵜野福子「スコツチ仔犬の育て方」より 昭和12年
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スコティッシュ・テリアの日本史
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