警戒犬用法例
一、昭和十年九月大隊主力秋季討伐の爲各中隊に軍犬を配當し、兵営内外の警戒及巡察に使用し、兵員の僅少を補ひ、各中隊共良好なる成果を収めたり。
二、錦縣留守中隊に於て十一月二十日より十二月中旬迄北島、田邊飛行大隊の飛行場警戒に使用し好評を博せり。
ハタ號(牡六歳セパード種青島産)昭和七年補充以來成績優秀、特に先の功績を挙げ、昭和十一年十一月戰死し目下表彰方申請中。
(イ)昭和十年五月十八日午後四時、裏門警戒中満人が潜入し毛布を窃取逃走せんとするを發見し咆哮して衛兵に急を報しめたり。司令は兵二名を巡察せしめ、且ハタ號の繋鎖を解きて襲撃を命じ、人犬一致して之を逮捕す。
(ロ)昭和十一年十一月十一日秋季討伐に参加し興京縣黄土溝附近の合流匪約二百の攻撃に際し、塩見小隊内田軍曹之を連行し終始尖兵と行動を共にし、警戒捜索に任じ十二月天明次雪中に攻撃開始、戰闘熾烈を加ふ。小隊長は本状況を約二千米を隔つる本部に通報すべくハタ號に之を託す。該犬は途中左顎部に盲管銃創を受けたるも十数分を費して本部に達し、其の使命を全ふし本隊よりの側面攻撃を促進せしめ、遂に匪團に徹底的打撃を與へしむるを得たり。部隊は十三日午後八時撫順に凱旋せるも、疲労衰弱甚しく、加療の効なく十一月二十一日午前八時終に斃死す。
本年五月初旬桓仁縣倒木溝附近の楬匪討伐に全犬を参加せしめ、夜間の警戒、傳令等に使用す。特に傳令犬チハル號は支隊の本部―古谷小隊間約二千米の山岳地に於て数回に亘り作命の逓送及他の連絡に優秀なる能力を發揮せり(昭和12年7月)
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