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11月12日の犬たち

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平林家畜病院『狂犬病予防注射控簿 昭和十三年十月廿七日以降』より

昭和13年11月12日診察

 

疆

昭和10年、歩兵第43連隊の秋季演習に参加。11月11日午前10時、児島東端に位置する第2中隊との3000m伝令を開始。
12日午前1時、第2中隊から戻る途中の疆は、50m程駈け出したところで後方から驀進してきたトラックに轢かれ、死亡 。

 

蘇州城内の治安を護る丸尾部隊の大野勝太郎伍長(香川縣綾歌郡昭和村)は那須重一上等兵(大阪市大正區三軒家櫨町)、高橋計二一等兵(香川県小豆郡淵崎村)その他の手兵を率ゐて蘇州城外楓橋鎮に特設された〇〇の警備にあたつてゐるが、この兵隊さん達からわが子の様に可愛がつてゐる立派な軍用犬がある。
通りかゝつた記者が「軍犬班の方々ですか」と思はずきくと「警備班ですが」と冒頭して次のやうな陣中美談を聞かせてくれた。
忘れもせぬ昨年の十一月十二日午前一時のことです。南翔付近の一部落から陳宅といふ百戸ばかりの部落によつて頑強に抵抗する敵情偵察の命をうけて斥候にでました途中、澤山な戰友の屍を越えて漸く任務を終へ、さらに朝四時四十分陳宅を占領すべく命をうけ、〇隊が水筒の水で決死の水杯を交しクリークを渡り鐡條網を破壊して頑敵を殲滅し六名を捕虜として完全に占領しました。
陳宅攻略の戰死者収容の時、姓名不明の軍犬班勇士の戰死體の枕頭に一頭の痩せ衰へた軍用犬がしよんぼり座つて主人の死體を護つてゐました。死體を収容しようとすると怒つてほえたてましたが、人間に話すやうになだめると、可哀想に目に涙をためてうなづくのです。
連れ歸つて食物を與へましたが少しも食べません。いろ〃なだめて漸く食べさせました。われ〃が進軍しはじめると可愛いものでどこまでもついてくるのです。だからとう〃私の班の飼犬みたいになつてしまつたのです。
今でも時々戰死した主人を思ひ出すのでせう。それは〃悲しい聲でなきつゞけます。
そんな夜は頭を撫でてなだめてやるのですが、さうすると私に身をすりよせて寝てしまひます。
もし舊主の姓名がわかつたら凱旋後遺族の方に軍の許可を得て贈りたいと考へてゐますが、何分にも戰死者の姓名がわからないものですから……。
語り終つた大野伍長の眼には涙さへ宿つてゐた。
蘇州郊外楓橋鎮にて、東京日日新聞西瀬特派員発 昭和13年

 

平林家畜病院『狂犬病予防注射控簿 昭和十三年十月廿七日以降』より

昭和18年11月12日診察 


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